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「フリーズソウル2022」レポート!アジアアート市場の中心地として期待が高まる韓国のいま

近年、アート市場の次の中心地としての期待が高まる韓国、ソウル。欧米のメガギャラリーが、次々とソウルに支店を開設しています。

 

ロンドン発祥のアートフェア「Frieze(フリーズ)」はアジア初の開催地として、韓国・ソウルでの開催を決定。2022年9月2日に初開催となる「Frieze Seoul(フリーズソウル)」が開幕し、初日に数百万ドルの売上を達成しました。

 

アジアのアート市場の新たな中心地として期待が高まる韓国、ソウルのアート市場について詳しく解説していきます。

 

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2022年初開催の「フリーズソウル」

ソウル、江南(カンナム)地域にあるCOEXコンベンションセンターにて、9月2〜5日の3日間にわたり開催された国際アートフェア「Frieze Seoul(フリーズソウル)」。

ロンドン発祥の国際的なアートフェア「Frieze(フリーズ)」は、これまでロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスとフェアを展開してきましたが、今回、アジア初の開催地としてソウルが選ばれました。

国内外から約110のギャラリーが出展し、世界中のアートコレクターとディーラーが集結。

韓国最大のアートフェア「KIAF SEOUL(Korea International Art Fair)」も同センターにて同時開催し、会場全体には人が溢れかえりました。

 

有名コレクター、キュレーターが来場、BTSのRMも!?

観客の多くは韓国人でしたが、バングラデシュ人コレクターのRajeeb Samdani、インテリアデザイナーのYassmin Ghandehari、リビア王女のAlia Al-Senussiなど、海外のコレクターが来場。

Hans Ulrich Obrist、Daniel Birnbaum、Naomi Beckwithなど著名なキュレーターの姿もありました。

K-POPアイドルグループ「BTS」のリーダーで、アートコレクターとしても有名なRMが会場に現れると、会場は一時騒然となりました。

 

開催初日に数百万ドルの売上を達成

初開催となる「フリーズソウル2022」では、多くのギャラリーが好調な売上を報告しました。

 

韓国国内のギャラリー

ソウルの「Kiche」ギャラリーは、韓国アーティスト・Ok Seungcheolの絵画をそれぞれ約6,453万円、彫刻2点をそれぞれ約1,720万円で販売し、完売となりました。

同じくソウルの「Cylinder」ギャラリーは、ロンドンを拠点にする画家、トリスタン・ピゴット(Tristan Pigott)の油彩作品10点を18万円〜189万円で販売しました。

 

欧米から参加したギャラリー

イスタンブールとベルリンに支店を持つ「Zilberman」ギャラリーが、シンガポール人アーティスト・Sim Chi Yinなど8作家の作品を約140〜200万円の価格で販売。

「Hauser & Wirth」ギャラリーは、彫刻家、ジョージ・コンド(George Condo)の作品を韓国の私立美術館に約4億円で販売。

「Jason Haam」ギャラリーは、スイスの現代アーティスト、ウルス・フィッシャー(URS FISCHER)の絵画を約1億7,200万円でソウルのアートコレクターに販売しました。

出展作品のほとんどがアジアのコレクターに購入されたそうです。

 

参加ギャラリーの多くがコネクション形成を重視

アジア初開催となる今回は、参加ギャラリーの多くが、販売よりもコレクターとのコネクション形成を重視していたため、他の年で開催されたフリーズに比べると販売ペースは遅かったようです。

オークションハウス「Sotheby’s(サザビーズ)」のアジア現代美術部門の責任者・Alex Branczikは、

多くのギャラリーにとっては、目先の売り上げよりも、人脈が重要であり、それが将来のアジアでの売り上げに繋がると思います。

とコメントを寄せました。

ニューヨーク、ロンドン、パリに支店を持つ「Skarstedt」ギャラリーのMartin Klosterfeldeは、

韓国のコレクターに数点の作品を予約販売しましたが、忍耐が勝負であることが分かりました。

スイスのアートバーゼルでは、すべてが初日に決まりますが、こちらでは毎日がとても忙しいです。

とコメントしています。

 

再び活気付く韓国のアート市場

ソウルはかつて、2000年代初頭にもアートブームを経験しています。2008年の金融危機以降は足踏み状態でしたが、近年再び活況を呈しています。

「Pace(ペース)」、「Gladstone(グラッドストーン)」、「Perrotin(ペロタン)」などのメガギャラリーがソウルに支店を開設しており、オークションハウスのクリスティーズとフィリップスもソウルで展覧会を開催しています。

 

韓国最大級のアートフェア「KIAF SEOUL」

韓国で20年以上の歴史を持つアートフェア「KIAF SEOUL(Korea International Art Fair)」は、韓国と世界のアート市場の架け橋としての役割を担ってきました。

今年のKIAF2022には、37の初出展ギャラリーを含む、164のギャラリーが参加。昨年度の2倍となる60のギャラリーが海外から参加し、2019年度に匹敵する規模のフェアとなりました。

 

2022年度の開催に向けて、KIAFは運営方針を大きく変えました。

フリーズソウルと同時開催にすることで、相乗効果を生み出し、ソウルのアートシーンにより国際的なインパクトをもたらしました。

さらに、広報のために海外のPR会社を雇い、欧米のジャーナリストを迎えるなど、国際的な認知を高める工夫もしています。

実際に訪れた観客の多くは韓国人でしたが、会場には英語、広東語、北京語などが飛び交っていました。

 

KIAFに7年ぶりに出展した東京のアートフロントギャラリー、ゼネラルマネージャーの庄司氏は以下のようにコメントしています。

フリーズソウルの同時開催により、より多くの人が来てくれると感じていますし、韓国の経済も好調です。

アートフロントギャラリーでは、現代アーティスト・角文平の大型彫刻作品を奮発して輸送し、フェアの開場時間直後に、日本画家・坂本トクロウの2018年の絵画など2作品を韓国や欧米のバイヤーに販売しました。

 

イスタンブールとベルリンに拠点を持つZilbermanギャラリーの創設者・Moiz Zilbermanは、過去2年間の渡航制限のためにアートバーゼル香港への出展を断念し、新たな市場としてソウルに訪れたと言います。

フリーズには国際的なコレクターが集まります。

韓国政府も現代美術を支援しています。

今こそソウルに来てチェックする時だと判断したのです。 

 

フリーズソウル、KIAF同時開催によるインパクト

KIAFとフリーズソウルは同日、同会場の異なるフロアで開催され、共通の入場券が販売されました。

これにより、同じくアジア圏で開催する2つのアートフェア、「アートバーゼル香港」(2022年度は137ギャラリーが参加)、シンガポールで開催する「アートSG」(2023年度に150以上のギャラリーが参加)を上回る規模を実現しました。

KIAFはさらに、サテライトフェアとして「Kiaf Plus」を開設し、創業5年未満のギャラリーが出展が可能になりました。

 

韓国が国際的なマーケットとして注目される理由

ソウルがアジアにおけるアートビジネスの中心地として期待されている背景には、中国本土での不動産暴落の脅威、香港での民主的自由に対する弾圧により、香港でのビジネスが困難になったという経緯があります。

香港は、2020年に施行される新たな国家安全保障法、それに対する国内での抗議運動、国際観光客が激減した「ゼロ・コビッド」政策など、国内情勢は依然として落ち着かない様子です。

 

香港の政治状況を考慮し、フリーズを含む業界関係者は次のアートマーケットの中心地にソウルを選択しました。

何より重要なことは、ソウルという街がアートマーケットにおいて自由であること。

商業の自由、発言の自由、そして表現の自由。政治的にも民主的な国で、犯罪も他国に比べ少ないことが挙げられます。

 

韓国に立ち塞がる壁

しかし、ソウルが香港に代わってアジア全体の国際的なアートのハブとなるためには、まだ改善すべき点があります。

 

  • ・ニューヨークやパリに匹敵するような観光地が少ない
  • ・欧米のディーラーにとって作品輸送のハードルが高い

 

ことなどが問題視されています。更には、

 

  • ・言葉の壁
  • ・Googleマップが韓国で十分に機能していない
  • ・香港ほど国際的ではない
  • ・韓国ウォンで表示される物価が分かりにくい

 

といった問題点も挙げられています。

様々な課題はあるものの、欧米からの出展者の多くはソウルでの現状に満足している様子です。

業界関係者の多くは、長引くパンデミック関連の渡航制限により香港でのビジネスが困難なため、新しい市場開拓を止めたくないと考えています。

 

韓国国内のアートディーラーからは、「自分達が築いてきたコレクターとの関係が奪われる」といったネガティブな意見も寄せられていますが、欧米のメガギャラリーの活動によって韓国国内のアート市場が拡大し、結果的には韓国の経済にポジティブなインパクトを与えていると言われています。

ディレクターのパトリック・リーは、日本、シンガポール、タイなど、より広い地域からのコレクターの参加に感激したと語ります。

これは韓国だけのフェアではなく、アジアのフェアなので、アジアのコレクターが来てくれたことがとても嬉しいです。

アーティストやギャラリーだけでなく、美術館やカルチャースペース、ファッションブランド店、レストランなど、多くの人がこのイベントを受け入れてくれたことを喜ばしく思います。

多くのアートディーラーにとって、ソウルの台頭は長い間待ち望んでいたことです。

韓国のディーラーたちは長年、海外の国際的なアートフェアに参加することで、韓国や世界のアートを広めてきました。

ですから、私たちのホームグラウンドであるソウルが、現代アートの世界的なハブとして台頭してきたことに、心から感謝し、興奮しています。

 

アート業界にも影響力を持つBTSリーダー、RM

K-POPアイドルグループ「BTS」のリーダー RMは近年、国際的なアートフェアやギャラリーに度々登場し、アートコレクターとしての活動で注目を集めています。

RMは、世界の有名美術館やギャラリー、アトリエを訪れては、インスタグラムで作品を紹介。

 

 
 
 
 
 
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RMのファンたちも投稿された場所に訪れたりと、新たなアートファンや若い世代のコレクターを生み出しています。

韓国国内のギャラリーや美術館のオープニングイベントにも登場し、2022年6月に開催されたスイスのアートバーゼルでは、韓国の芸術作品やお気に入りのアーティストを紹介しました。

2020年の26歳の誕生日には、韓国の国立近現代美術館(MMCA)に約890万円以上の寄付をしています。

 

最後に

フリーズソウル、KIAFの同時開催により、一気に国際的なアート市場としての地位を確立した韓国。

今後どのような取り組みで、持続可能なアートシーンを保ち、アジアのアートハブとして成長させていくのでしょうか。

香港の国内情勢が不安定な現在、アジアの他の地域でも、アートマーケットは確実に熱気を帯びてきています。

シンガポールは、ソウルに並ぼうと同じくアジアのアートマーケットの中心地としての地位を確立しつつある国です。

サザビーズは2022年8月末にシンガポールで15年ぶりにライブオークションを開催し、約25億円の売り上げを記録。

2023年1月には、150以上のギャラリーが参加するフェア・アートSGが開催予定です。

韓国のアートマーケットが今後どのように成長していくのか。

アジアのアート市場の動向に、引き続き目が離せません。

 

 

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