Chim↑Pomとは?メンバーと活動歴、代表作品について詳しく紹介
現代アートシーンで異彩を放つアーティスト・コレクティブ「Chim↑Pom」。
型破りな表現で社会に一石を投じる彼らの作品は、賛否両論ありながらも世界で高い評価を得ています。
今回は、日本を代表するアート集団Chim↑Pomの概要と代表作品を紹介します。
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Chim↑Pomとは
6人のメンバーから成るアート集団
Chim↑Pomは、フロントウーマンのエリイ、リーダーの卯城竜太ほか、林靖高、水野俊紀、岡田将孝、稲岡求から成る6人組の現代アート集団です。
消費社会や震災、原爆といった社会の課題をテーマに、映像作品を織り交ぜたインスタレーション作品を中心に制作・発表しています。
Chim↑Pomの作品は、鋭い社会批評とルールに縛られない表現が特徴です。
社会にメッセージを投げかける作品は世界で高く評価される一方、その表現の過激さが物議を醸すことも。
賛否両論がありつつも、既存概念に囚われず自由でユニークな表現活動を続ける彼らは、現代アートシーンにおいて異色の存在として注目されています。
Chim↑Pomの経歴
2005年に東京で結成
Chim↑Pomは2005年に東京で結成されました。
美術大学を卒業したのはエリイのみで、他のメンバーはいわゆる正規の美術教育を受けておらず、自分たちで表現技術を身につけました。
リーダーの卯城竜太(上画像右端)は現代美術家・会田誠が2001〜2004年まで美学校で担当していた「バラバラアートクラス」出身で、会田誠がサンフランシスコで個展を開催した際に、会場の一部で作品を展示したことが、Chim↑Pomのアーティストデビューとなりました。
強烈な社会的メッセージを含んだ大胆なパフォーマンス
Chim↑Pomは現代社会に対する強烈なメッセージを、時に過激ともいえる大胆なパフォーマンスを通して、確信犯的に論議の種をまくことで知られます。
東日本大震災後は、「震災」「原子力発電所」「放射能」をテーマにした作品を複数発表。
芸術を通して、日本が直面している状況を臆することなく露わにしました。
「Asia Art Award」のファイナリストに
様々な論争、批判を巻き起こしながらChim↑Pomのアーティストとしての評価は着実に高まり、2010年にアジア地域の若手現代アーティストのコンテスト「Asia Art Award」の日本代表に選出されます。
同年には国際美術展サンパウロ・ビエンナーレに参加し、日本の現代アートシーンを代表する存在としての地位を確立していきました。
パフォーマンス以外の活動も活発化
彼らは国内での作品発表にとどまらず、海外個展の開催、他アーティストの展示のキュレーション、高円寺のカルチャースポット「キタコレビル」内でのスペース運営など、パフォーマンス以外の活動も活発に行っています。
近年特に話題になった活動としては、Chim↑Pomが立案者となり、現在も開催されている国際芸術展「Don’t Follow the Wind」(上)があります。
東京電力福島第一原子力発電所の事故により「帰還困難区域」と指定された地域を会場として、2015年3月11日から開催されている展覧会です。
Chim↑Pomが世界のアーティストに参加を呼びかけ、制作された作品は全て帰還困難区域内に展示されているため、事故が完全に収束するその日まで、誰1人その作品を見ることができません。
Chim↑Pomの代表作品
スーパーラット(2006年)
街で爆発的に増えているネズミを網で捕獲し、その剥製をアニメ「ポケットモンスター」のキャラクター「ピカチュウ」に似せて黄色く着色した作品「スーパーラット」。
もともと「スーパーラット」とは、駆除剤への抗体を持っているネズミを指す造語です。
Chim↑Pomは公共圏で進化し生きるアーティストの姿をスーパーラットに重ね、表現しました。
BLACK OF DEATH(2007年、2013年)
「BLACK OF DEATH」はカラスの声をスピーカーで流したり、カラスの剥製を掲げながら車やバイクなどで移動し、カラスを国会議事堂前や渋谷の繁華街に集結させるゲリラアクションです。
2013年には、福島の帰還困難区域で増殖したカラスたちを、区域外まで導き出して再制作しました。
ヒロシマの空をピカッとさせる(2008年)
2008年、広島の原爆ドーム上空に飛行機雲で「ピカッ」と描いた「ヒロシマの空をピカッとさせる」。
この作品は広島市民、被爆者から非難の声があがりインターネットで炎上、最終的に謝罪会見にまで発展しました。
この騒動を受けて広島市現代美術館ミュージアムスタジオで開催される予定だったChim↑Pomの個展は中止となりました。
Level 7 feat.明日の神話(2011年)
2011年に渋谷駅の岡本太郎の壁画「明日の神話」に無断で原子力発電所事故を想起させる絵「LEVEL7 feat.明日の神話」を書き足し、メンバーが書類送検される騒動に。
ただの落書きでなく「明らかに芸術の文脈から行われた行為」であることから、岡本太郎記念館館長の平野暁臣氏は彼らを非難せず、2013年には岡本太郎記念館とChim↑Pomの合同展が開催されました。
気合い100連発(2011年)
福島県の若者6人とChim↑Pomメンバーが1人10回叫ぶパフォーマンス「気合い100連発」。
叫び続けるなかで若者から出た「放射能最高!」という言葉に一部の展示でNGが出てしまい、映像上で該当部分をピー音で隠したバージョンを制作した結果、「反日的な言葉が隠されているのでは」という誤った情報が拡散する事態に。
結果として「一部の言葉だけを切り取り、誤った情報をベースに批判する社会」を露わにする作品となりました。
LOVE IS OVER(2014年)
「LOVE IS OVER」は2014年にエリイの結婚披露宴として行われたパーティーとデモです。
深夜にどんちゃん騒ぎをして翌朝から警察の監視下で街頭デモを開始。
新宿歌舞伎町から西新宿に設置されているパブリック・アート「LOVE」まで練り歩きました。
タイトルは、ジョン・レノン&オノ・ヨーコによる「WAR IS OVER!」から名付けられました。
Chim↑Pomの受賞歴
「新・公募展2007」広島市現代美術館賞
2007年に地雷除去活動をするセレブに憧れたエリイがカンボジアに渡航し、高級ブランドバックやiPodなどを地雷で爆破した「サンキューセレブプロジェクト アイムボカン」。
Chim↑Pomは本作で広島市現代美術館「新・公募展2007」の大賞を受賞しています。
Prudential Eye Awards 2015
Chim↑Pomは、2015年にアジアの若手現代アーティストを表彰するアート賞「Prudential Eye Awards 2015」にて、大賞にあたる「Emerging Artist of the Year」を受賞しました。
さらにデジタル・ビデオ部門の最優秀賞にも選出されます。
この受賞について、会田誠はツイッター上で「錦織圭に匹敵する快挙」と投稿し、Chim↑Pomがアジアナンバー1の若手現代アーティストとなったことを祝福しました。
Chim↑Pomが開催した主な個展・合同展
スーパー☆ラット(2006)
2006年に「スーパー☆ラット」展で、ネズミの剥製を「ピカチュウ」に似せて黄色く着色した作品「スーパーラット」を、Chim↑Pomが路上でネズミを捕獲する様子を映した映像作品とともに発表しました。
日本のアートは10年おくれている(2008)
2008年には、恵比寿ナディッフアパートで「日本のアートは10年おくれている」を開催しました。
これはナディッフアパートの地下ギャラリーのこけら落としイベントで、Chim↑Pomはギャラリーの壁に壁画を描き、床を浸水させ、どんちゃんさわぎのパーティーをしてその形跡を展示。
オープニングでは、水の上にエリイが浮き輪に乗って200匹のホタルを飛ばすパフォーマンスを行いました。
広島!(2009)
社会的騒動にまで発展した2008年のパフォーマンス「ヒロシマの空をピカッとさせる」の後、Chim↑Pomは騒動をまとめた本『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』を出版し、広島と核問題をテーマにした多くの作品を制作しました。
それらの作品を、2009年の個展「広島!」で展示します。VACANT(東京都)での開催を皮切りに、展示タイトルの「!」を1つずつ増やしながら、国内だけでなく海外にも巡回しました。
にんげんていいな(2009)
2009年に山本現代(東京都)で開催した「にんげんていいな」展では「くるくるパーティ」「making of the 即身仏」の2つのインスタレーション作品を発表しました。
「くるくるパーティ」では、「食べ物を粗末にすること」をテーマに、実際に行った狂宴の痕跡を食品サンプルという形で再現。
「making of the 即身仏」ではメンバーの稲岡が断食をし、自身を伝統工芸品としての「即身仏」に変容させるまでの過程を作品としました。
シブカル祭。(2011)
「シブカル祭。」は渋谷パルコにて開催された若い女性クリエーターを主役にしたイベントです。
Chim↑Pomは若者文化の顔となるアート集団として、その初回の2011年に「デザイン部」と「パフォーマンス部」として参加しました。
PAVILION(2013)
2013年に岡本太郎記念館とのコラボレーション展「PAVILION」を開催。
岡本太郎記念館館長が2011年の明日の神話騒動を受けて、「これをやったゲリラを正規のリングに立たせたら、いったいなにをするのだろう」という問いから生まれた展示でした。
記念館内にはChim↑Pomの作品15点が展示され、その中には「LEVEL7 feat.明日の神話」もあり、展示終了後には岡本太郎以外の初の寄贈作品として記念館に収蔵されました。
また明日もみてくれるかな?(2016)
解体が予定されている歌舞伎町振興組合ビルの地上4階から地下1階までを使用した「また明日もみてくれるかな?」では、ライブやパフォーマンスとともに新作を発表。
会期終了後も作品群は撤去されず、ビルの建て壊しとともに破壊されました。
作品の残骸は新たな作品の素材として使われ、翌年、高円寺のキタコレビルで催された展覧会にて展示されました。
Chim↑Pom展:ハッピースプリング(2022)
2022年に活動初期から多くの代表作や新作までを一挙に紹介する大型回顧展本展「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」が森美術館で開催。
子どもを持つエリイの発案により、クラウドファンディングで資金を集めたアートプロジェクト「くらいんぐみゅーじあむ」で、展覧会場内に託児所が開設されました。
本展の開催にあたり、歌舞伎町を中心にホストクラブや飲食店などを手掛ける「Smappa!Group」からの協賛申し出を森美術館が断ったことを受けて、グループ名をChim↑Pomから「Chim↑Pom from Smappa!Group」に改名しています。
この度Chim↑Pomは、2022年4月27日をもちまして、Chim↑Pom from Smappa!Groupへと改名致します。
当面はこの名称で活動いたしますので、皆さまにはご周知頂き、今後ともご愛顧賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
ことの経緯は、森美術館で開催中の「ハッピースプリング」展での設営費などを賄うために美術館から協力要請を受け、一部作家側で集めることとなった約1000万円の協賛金に端を発しております。
私どもからいくつかの企業にお声がけさせて頂いたうち、Smappa!Groupからのお申し出だけが美術館からお断りされました。
(Chim↑Pom from Smappa!Groupリリースより)
「Chim↑Pom」のおすすめ関連書籍
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Chim↑Pomが自身の作品について、どのような思いで数々のパフォーマンスや作品制作に取り組んできたか、それぞれの作品にどのような意図があるのかを紹介している一冊です。
注目すべき世界のアーティストたちについても紹介されています。
Chim↑Pom—チンポム作品集
デビューから5年間のChim↑Pomの活動がまとめられたファースト作品集です。
アート界の異端児として登場したChim↑Pomの躍進が記録されています。
エリイはいつも気持ち悪い エリイ写真集 produced by Chim↑Pom
2014年に新宿で敢行された「LOVE IS OVER」の一部始終をレポートした写真集です。
写真家は篠山紀信やレスリー・キーなど。
800ページのボリュームで、当日の様子を伝える一冊となっています。
美術手帖 2022年4月号
美術手帖のChim↑Pom特集号。
インタビューと対談記事でChim↑Pomの実体に迫る内容です。
「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」の制作ドキュメントも掲載。
はい、こんにちは
エリイの目から見える世界が独特の文章で綴られたエッセイ集です。
妊娠、出産の体験をエリイの感性で記されていて、アーティストの視点を体感できます。
まとめ
既存の概念を覆す表現活動を続けるChim↑Pom。
賛否両論を巻き起こしながら、彼らが現代社会と真正面から向き合おうとする姿勢は国内外で評価されています。
芸術を武器に現代社会に切り込み続けるChim↑Pomから今後も目が離せません。
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