METフェルメールメトロポリタン美術館保存修復
ART

フェルメール作「眠る女」から消された男の正体は?メトロポリタン美術館の調査により詳細が明らかに

フェルメール作「眠る女」(1656-57年頃)には当初、うたた寝をする女性のそばに男性や犬が描かれ、のちに塗りつぶされていたことが以前から知られており、男性の正体についてこれまで数多くの研究と議論が交わされてきました。

今回、この絵を所蔵するニューヨークのメトロポリタン美術館が最新の調査結果を発表し、「消された男」の詳細が明らかになりました。

 

あなたの部屋に合うアートは?
「アート診断」

Q1.希望の価格帯は?

Q2.気になるジャンル・モチーフは?

国内最大のアートギャラリーで
あなたにおすすめの作品が
23件見つかりました!
診断をやり直す
国内最大のアートギャラリーで
あなたにおすすめの作品が
30件見つかりました!
診断をやり直す
国内最大のアートギャラリーで
あなたにおすすめの作品が
34件見つかりました!
診断をやり直す
国内最大のアートギャラリーで
あなたにおすすめの作品が
55件見つかりました!
診断をやり直す

フェルメール「眠る女」に描かれた、謎の男性

ヨハネス・フェルメールの代表作品の1つとして知られる「眠る女」(1656-57年頃)には当初、うたた寝をする女性のそばに男性や犬が描かれ、上から塗りつぶした跡があることは以前から知られていました。

 

女性のすぐそばに男性が描かれていたことから「フェルメールの作品によく見られる誘惑の場面だったのではないか」と推測する意見も多くありましたが、「男性の正体」については長年謎に包まれたままでした。

この絵は女性の周囲に奇妙な空間が空いていることから、フェルメールが意図的に中途半端な構図で描いたものだとされてきました。

 

蛍光X線分光分析により、男性のシルエットが明らかに

「眠る女」を所蔵するニューヨークのメトロポリタン美術館はこの絵の調査を進め、2023年5月初旬、アムステルダム国立美術館で開催中のフェルメールの大回顧展に合わせて行われたシンポジウムで調査報告を行いました。

 

メトロポリタン美術館の研究チームは調査の結果、男性のより詳細な人物像が明らかになったと発表。

蛍光X線を用いた画像解析から、「男性が絵筆を持つように手を伸ばしているシルエット」が確認でき、「この絵に描かれていた扉はもともとイーゼルのようなものだった」と報告しました。

 

メトロポリタン美術館の保存修復師ドロシー・マホンと研究科学者シルヴィア・センティーノは、以下のようにコメントしています。

現在進行中の調査から、絵画の背景の中に塗り潰された男性について、より多くの情報が得られたことをうれしく思います。

蛍光X線分光分析(XRF)を用いたマッピングやイメージングは、芸術家の意図と絵画の意味をより理解することを目的とした芸術作品の研究において、前進したことを証明しています。

この作品とともに、メトロポリタン美術館が所蔵する他のフェルメール作品の研究を継続することを楽しみにしています。

 

フェルメールが同時代の画家、ニコラース・マースの作品を意識したものか

メトロポリタン美術館の発表を受けて、Art Newspaperの記者マーティン・ベイリーは、「眠る女」に描かれていた男性は「おそらくフェルメールの自画像である」とコメント。

フェルメールは自身の作品に鏡をたびたび登場させていますが、本作でも自身の自画像と、壁の鏡に映った自分の姿を描いていたのではないかと述べました。

その証拠として彼は、フェルメールと同時代の画家、ニコラース・マースの絵画を挙げています。

 

17世紀オランダの画家であるニコラース・マースが1655年頃に描いた「The Naughty Drummer」。

この絵には奥の壁の上部に鏡があり、絵筆を持った画家の姿が描かれています。

ニコラース・マースはフェルメールの自宅からさほど遠くない場所に住んでいたことから、フェルメールは「眠る乙女」を描く前にこの絵を見た可能性があり、同時代の作家の作品からインスピレーションを得たのでは、と推測しています。

 

彼の推測が事実であれば、「眠る乙女」に描かれている女性はメイドではなく、ポーズ中に眠ってしまった画家のモデルということになります。

メトロポリタン美術館の広報担当者によると、この絵の調査結果の全容はまだ公開されておらず、今後発表する予定とのことです。

 

全世界で調査研究が進むフェルメール作品

現在、フェルメール作品に関する調査研究が世界各国で盛んに行われ、今回のような新発見が見つかると同時に、その真贋にまつわるニュースも世間を騒がせています。

 

2023年4月には、ケンウッドハウス(ロンドン)が所蔵する「ギターを弾く女」(1670–1672)のモノクロの複製画(模写作品)と言われていたフィラデルフィア美術館(アメリカ)所蔵の絵画は、フェルメールの真作であるという事実が発表されました。

2022年10月には、長年フェルメールの真作と言われてきたナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)が所蔵するフェルメール作品4点のうち、「Girl With a Flute」が贋作であることが証明されています。

 

フェルメールの出生地オランダでは現在、現存するフェルメール作品約35点のうち、史上最多の28点が一堂に会する大回顧展「フェルメール展」が2023年6月4日まで開催されています。

新たな発見に注目が集まるフェルメール作品、是非本物を鑑賞しに行ってみてください。

 

フェルメール展

会期:2023年2月10日〜2023年6月4日

会場:アムステルダム国立美術館

開館時間:日曜日から水曜日: 9:00−18:00
     木曜日、金曜日、土曜日: 9:00−22:00

休館日:なし

公式HP:https://www.rijksmuseum.nl/en/johannes-vermeer

 

 

関連記事

猪熊弦一郎とは?上野駅壁画や三越包装紙で有名な画家の生涯と代表作品について解説

上野駅中央改札の壁画や三越の包装紙をデザインしたことでも有名な猪熊弦一郎。 誰もが一度は彼の作品を目にしたことがあるのではないでしょうか。 彼の出身地、香川県丸亀市には猪熊弦一郎現代美術館があり、「いのくまさん」の愛称で親しまれ

ピエール・ボナールとは?ナビ派の画家が描いた絵画とその生涯を詳しく解説

ピエール・ボナールは19世紀末から20世紀前半にかけて活動した、ナビ派のフランス人画家です。 色彩表現が豊かな画風が特徴のボナールは「色彩の魔術師」と呼ばれ、室内など生活に身近な題材を数多く描いたことから、アンティミスト(親密派)とも

「M+」(エムプラス)とは?香港西九龍文化区にオープンしたアジア最大級の美術館

2021年11月12日、20世紀・21世紀の視覚芸術をテーマにしたアジア初の美術館「M+」(エムプラス)が香港に開館しました。 ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ロンドンのテートモダン、パリのポンピドゥーセンターにも匹敵する面積

草間彌生美術館「毎日愛について祈っている」展が開幕、10/7から

草間彌生美術館(東京都新宿)にて、開館から10回目となる企画展「毎日愛について祈っている」展が、2022年10月7日より開幕します。 新作を中心とした70点に及ぶ展示作品は、そのほとんどが世界初公開となり、草間彌生の創作の近況を知

オスロ国立美術館が2022年6月にオープン!「ムンクの叫び」など見どころを詳しく解説

2022年6月11日、構想から約30年の時を経て、ノルウェーの首都オスロに「オスロ国立美術館」(Nasjonalmuseet)が開館しました。 ドイツの建築事務所「Kleihues +Schuwerk」が設計した巨大な建物は、58

TOP