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「新古典主義」とは?有名な画家と代表作品について分かりやすく解説

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「新古典主義」とは?

ギリシャやローマの古典芸術の復興ともいえる「新古典主義」は、18世紀半ばから19世紀初めにローマを中心にヨーロッパ全土で興った美術や建築の潮流です。

新古典主義が広まる前には、ルネサンス後の16〜17世紀にバロック、18世紀初頭からはロココという芸術様式が隆盛を極めていました。

装飾性の強い宮廷美術だったバロックとロココに対し、相反する古典(自然で写実的)への回帰として新古典主義は始まったのです。

18世紀半ばにヘルクラネウムとポンペイの両遺跡が発掘されたことも、ローマや周辺国の人々のいにしえの時代への興味を高めるきっかけとなり、1789年のフランス革命の勃発なども反体制の気運を後押ししました。

新古典主義の時代に活躍した芸術家としては、画家のジャック=ルイ・ダヴィッド、ドミニク・アングル、フランソワ・ジェラール、アントワーヌ=ジャン・グロなどが有名です。

 

活躍したアーティスト

ジャック=ルイ・ダヴィッド
ドミニク・アングル
フランソワ・ジェラール
アントワーヌ=ジャン・グロ

 

新古典主義の傑作4選

1.ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト

作者  ジャック=ルイ・ダヴィッド
制作年 1801年
所蔵  マルメゾン城 


解説

かの有名なフレンスの英雄ナポレオン・ボナパルトを描いた肖像画です。

作者のジャック=ルイ・ダヴィッドは新古典主義を代表するフランスの画家の1人で、18世紀後半からイタリアに留学し、そこでロココ調から新古典主義へと変化していきました。

フランス革命を支持し政治活動にも参加していたダヴィッドは、体制側のナポレオンに対しても新たな時代のリーダーとして肖像画などを通したサポートを行いました。

ナポレオンの庇護を受け、首席画家に登りつめたダヴィッドですが、やがてナポレオンと共に失脚してしまいます。

そんな命運を共にしたダヴィッドが描いた、馬上の勇ましいナポレオンの肖像画は英雄のイメージ作りに大きく役立ち、時代の寵児の姿を歴史に残しました。

「ベルナール峠からアルプスを越えるボナパルト」というタイトルの絵は全部で5枚ありほぼ同じ構図で描かれていますが、フランスのマルメゾン城に所蔵されているこの作品が最も有名なものになります。

 

2.ナポレオン1世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠

 

作者  ジャック=ルイ・ダヴィッド
制作年 1805〜1807年
所蔵  ルーブル美術館


解説

「ナポレオンの戴冠式」の略称で知られる大作も、ジャック=ルイ・ダヴィッドの作品で、ナポレオンが新たなフランス皇帝として即位する戴冠式という儀式を描いています。

本来ならばナポレオンが教皇から冠を受けるシーンが描かれるべき儀式なのですが、この絵ではナポレオンが妻ジョセフィーヌに冠を授けようとしています。

実際の戴冠式で、ナポレオンは冠をさずける役割のローマ教皇を、はるばるパリまで呼び寄せた上、教皇の手でなく自らの手で冠をかぶるという、前代未聞の挑戦的な行動をとったと言われています。

それをそのまま絵にすれば、旧体制派からの反発は不可避で、その上ナポレオンの独裁制が後の世まで伝わることになります。

そのため、作者のダヴィッドが作品の演出として、事実とは異なる構図でありながら、しかし教皇への侮辱を防ぎつつナポレオンをも納得させる作品に仕上げたのです。

こうした事情から「ナポレオン1世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」は、新古典主義の芸術が生れた時代背景を如実に表す絵ともいえます。実物は10×6メートルという大作です。

 

3.グランド・オダリスク

 

作者  ドミニク・アングル
制作年 1814年
所蔵  ルーヴル美術館


解説

人体の曲線美が印象的な裸婦像「グランド・オダリスク」は、フランスの画家ドミニク・アングルの作品です。

ジャック=ルイ・ダヴィッドからの新古典主義芸術の継承者でもある巨匠ドミニク・アングルは、モデルの形体を幾何学的に解釈したデッサンの重視、緻密に構成された階調(濃淡の様子)やテクスチャーなどの特徴で知られ、数多くの傑作を世に送り出しました。

この作品は、後世のキュビズムや現代美術にも多大な影響を与えています。

「グランド・オダリスク」は、意図的に伸張された背中や手足という解剖学的には不自然なプロポーションの女性を描いていますが、女性のけだるい眼差しと後ろ姿の美しさにハッとさせられる大作です。

トルコの後宮(ハレム)の女性を指す「オダリスク」は、当時のフランスの画家たちが好んで描いたモチーフの1つといわれています。

写真では表現できない絵画ならではといえる誇張表現による美しさを効果的に描いたドミニク・アングルは、批判を浴びながらも次第に芸術界での評価を高め、新古典主義の巨匠と呼ばれるまでになりました。

 

 

4.トルコ風呂

 

作者  ドミニク・アングル
制作年 1862年
所蔵  ルーヴル美術館


解説

ドミニク・アングルが82歳のときの傑作「トルコ風呂」は、ハレムの浴場でくつろぐたくさんの裸婦を描いています。

官能的かつ自然な人間性を緻密に表現しており、ドミニク・アングルの裸婦作品の晩年の集大成とも言われている作品です。

オリエンタルなムードの裸婦像に美を追求し続けたドミニク・アングルは、この絵の制作にあたり実際のモデルを全く使わず、それまでに描いたデッサンなどを参考にしながら作り上げました。

ナポレオン3世の依頼で描かれた同作ですが、皇妃が不快感を与える絵だとして拒否したことにより納品後数日で返却されたという逸話を持ちます。

結局「トルコ風呂」はトルコの元外交官ハリル・ベイに購入され、長い個人蔵の期間を経て現在はルーヴル美術館に所蔵されています。

ドミニク・アングルは、古典主義を重んじた盛期ルネサンスの画家ラファエロを敬愛していました。

「トルコ風呂」には、ラファエロも好んで用いた円形画(トンド)の形式が採用されています。

 

「新古典主義」のおすすめ関連書籍2選

『ナポレオンの生涯:ヨーロッパをわが手に』

 

ジャック=ルイ・ダヴィッドやドミニク・アングルなどの新古典主義の芸術と切っても切れない関係にある、革命の申し子・ナポレオンの伝記的作品(創元社、1999年)。

フランス革命後に登場しヨーロッパの覇者となったナポレオンは、民主国家の礎を築くという業績を残しながら、セント・ヘレナ島への流刑を経験するなど、まさに激動の人生を生きました。

本書は、ナポレオンの戦歴から恋愛まで、その人格と歴史的な立ち位置を当時の絵画と最新の研究で読み解く、新古典主義の時代背景を知るために適した1冊です。

価格¥1,728 創元社

 

● 読者の感想

”入門編として非常に良いです”
ナポレオンを知りたい人にとって入門編として優れていると思います。
ナポレオンの業績とフランス史の動きが分かりやすくコンパクトに書かれており、要所が押さえられていると思います。挿入されている絵や写真も史実をリアルに伝えており効果的と思います。

”興味を持って読める伝記本”
タイトルの通りナポレオンの伝記本です。
図版が豊富な「知の再発見」双書シリーズだけあって、ビジュアル面の充実度が高いです。
ナポレオンが描かれた絵画が多数紹介されています。
伝記本としては彼の成功、失敗ともに書かれていて客観的に感じられました。
また百日天下で復帰する際、新聞の見出しでの呼び方が変わって行ったというトリビア(都市伝説とも聞きますが)も紹介されていたりして、興味を持って読めました。
資料編ではナポレオンが最初の妻ジョゼフィーヌに宛てて書いた恋文が収録されており、英雄の意外な人間らしさが伺えるのも良かったです。

 

『新古典主義 (岩波 世界の美術)』

 

新古典主義の専門家デーヴィッド・アーウィンによる、新古典主義の全てがわかる解説本(岩波書店、2011年)。

絵画だけでなく建築から家庭用品までに及んだ新古典主義のトレンドを、ヨーロッパだけでなくアメリカ合衆国、インド、日本など世界各国への影響も踏まえて再解釈しています。

現代美術への影響も知ることができます。

価格¥2,094 岩波書店

 

● 読者の感想

”見やすい、わかりやすい”
値段を見て「高い!」と思いましたが、図版が多数あるので納得。
2ページに1つはあります。しかもほとんどカラー。
美術に詳しくなくても図版を見ているだけで楽しくなるでしょう。
本文では新古典主義の始まりから、その影響が現代に至るまでが書かれております。

”興味深いテーマです”
ネオ・ルネッサンスは、ヨーロッパから世界中に輸出された美術様式として、歴史的な交流の証拠として、
大変面白いです。
ヨーロッパ人の懐古趣味から、いろいろな比較ができます。

 

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