「印象派」とは?モネなどの有名な画家と代表作品を分かりやすく解説
感じたままに時代を描く
印象派の画家たち
日本人にも人気の高い「印象派」。
1860年代にマネは、奥行きがない空間や陰影に乏しい人物をあえて描くなど、従来の描き方を大きく逸脱した作品を発表し、絵画の新時代を開きました。
同じ頃に、自分の目に映った印象を画面にそのまま表現しようとしたのが、モネやルノワールです。
当時、フランスの美術界の中心だった芸術アカデミーの教育に疑問を持った彼らは、独自の展覧会を1874年に開催します。
そこで展示されたモネの「印象・日の出」は、批評家から「まるでスケッチのようだ」と酷評されました。
しかし、一般の民衆はモネら印象派の画家たちの絵を好意的に迎え、画家たち自身も「印象派」の名を使うようになっていきました。
「印象・日の出」(1873)
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エドゥアール・マネ
クロード・モネ
ルノワール
エドガー・ドガ
エドゥアール・マネ
1832年1月23日-1883年4月30日(享年51歳)
19世紀パリのモダニズムな生活風景を描いた最初のフランス画家。
写実主義から印象派への移行をうながした重要な人物で、近代美術の創始者とみなされています。
マネの絵画は、印象派を創始する若い画家たちに多大な影響を与えました。モネやルノアールなどの若手画家と知り合い、後に「バティニョール派」と呼ばれるようになります。マネはその中心的存在になり、普仏戦争後もモネにアトリエを斡旋し、ともに戸外で絵を描くなど、親しい関係は続きました。
保守的なプルジョワで、あくまでサロンにこだわり、印象派展には一回も出品したことがないマネですが、印象派の画家から見れば、頼りになる先輩であり、絵画の可能性を広げた先駆者であったことは確かです。
「オランピア」1863
オスカー・クロード・モネ
1840年11月14日-1926年12月5日(享年86歳)
クロード・モネはフランスの画家です。
それまでの伝統的な風景画、古典性、理想的な美などから逸脱して、近代性や自身の感覚をそのままに表現するという基本的な印象派哲学を一貫して実践しました。
光の変化と季節の移り変わりをとらえるために、時間帯や視点を変えて何度も同じ風景を描く方法を確立させました。
モネと日本の関係は深く、浮世絵を200以上収集し自宅の庭に日本風の橋をかけるなどした日本通で、「睡蓮」シリーズは、日本美術に強く影響を受けているといわれています。
「日本橋と睡蓮」1899
▶️モネについて詳しくはこちら
ピエール・オーギュスト・ルノワール
1841年2月25日-1919年12月3日(享年78歳)
ルノワールも印象派を代表するフランスの画家の一人です。
彼は主に人物画を多く描いていました。ルノワールの作品は全体的に明るい雰囲気で柔らかく淡い印象が特徴です。
1880年後頃から、それまでの印象派という技法に疑問を持ち始めたルノワールは、イタリア旅行でラファエロ・サンティらの古典絵画に触れ、徐々に画風が変化していきました。
独自の画風を生み出した彼は、穏やかな生活を送っていたものの、関節リウマチを患います。
ルノワールが生きた時代には、治せる薬があるはずもなく、曲がった指先で絵筆を持ちながらも思うように身体が動かない中でも毎日作品を生み続けました。
「舟遊びをする人々の昼食」1876
▶️ルノワールについて詳しくはこちら
エドガー・ドガ
1834年7月19日-1917年9月27日(享年83歳)
エドガー・ドガは、印象派のなかでも、最も強く古典主義の系譜を受け継いでいるフランスの画家です。
ドガは、バレエを主題とした作品でよく知られており、作品の半分以上はバレエの絵だったと言われています。裕福な家庭の出身であったドガは、バレエを好み、オペラ座の楽屋や練習風景・舞台袖といった一般人では出入りできない場所を描いた絵画を多く製作しました。
ドガは、構図はもちろんデッサンにも非常に優れており「動き」を描写するのが得意な画家でした。
1880年代後半になると、ドガは写真へ関心を持ちはじめます。彼は多くの友人のほかに、踊り子や女性のヌード写真も多数撮影し、それらの写真はドガのドローイングや絵画の下敷きにもなりました。
「舞台のバレエ稽古」1874
印象派の傑作4選
1.草上の昼食
作者 エドゥアール・マネ
制作年 1862〜1863年
所蔵 オルセー美術館
解説
『草上の昼食』は1863年のサロンに出品されましたが、普通の女性が裸体になっていことを批判され、落選してしまいます。当時、絵を描く場合「裸婦は神話の女神でならなくてはいけない。」という約束事があったからです。
また、左下に脱ぎ捨てられた衣服があることから、この女性は娼婦であることが想像できます。
1865年には、『オランピア』を発表。この絵もまたスキャンダルとなりました。陰影に乏しく、遠近感のないマネの作品は当時の人々を驚かせました。マネは西洋絵画の建前を破り、従来の描法から逸脱した、なんとも掟破りな作品を生み出したのです。
2.印象・日の出
作者 クロード・モネ
制作年 1873年(1872年という説もあり)
所蔵 マルモッタン美術館
解説
『印象・日の出』は「印象派」という名前を生み出したモネの作品です。
描かれた場所はモネの故郷、港町ル・アーヴル。港が見える部屋の窓から、霧の中を昇ってくる真っ赤な太陽と、それを写す波打つ海を描いています。
この絵の特徴は、水平線をあえて高めに設定していること。光が反射する水面が主役なのです。
一時期、これが日の出なのか日の入りなのかで研究者の中で議論されたことがありましたが、モネが滞在したホテルや太陽の位置などから、現在は日の出とされています。
残念ながらモネがいた当時のル・アーヴルは、第二次世界大戦でほとんどの建物が壊され、破壊されてしまいました。
3.ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会
作者 オーギュスト・ルノワール
制作年 1876年
所蔵 オルセー美術館
解説
1877年開催の第3回印象派展に出品された『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』。印象派の絵の中でも有名な作品のひとつといっていいでしょう。舞台はモンマルトルの丘にある同名のダンスホールです。
当時近くに住んでいたルノアールは、徒歩でここへ通い、作品を制作していました。絵の中の人々はルノアールの友人やお気に入りのモデルたち。木漏れ日の下で休日を楽しむ男女が、印象派のタッチで的確に表現されています。
この絵を厳しくコメントする批評家もいましたが、のちに彼のパトロンとなるシャンパルティエ夫妻など、これを期にルノアールの作品を気に入った人もいました。
この作品は印象派のメンバー・カイユボットの死後、フランス政府に寄贈されました。
4.舞台の踊り子
作者 エドガー・ドガ
制作年 1876年ごろ
所蔵 オルセー美術館
解説
バレリーナが両手を広げ、優雅に踊る一瞬の光と動きを捉えた作品。バレリーナが見せる一瞬の身のこなしや表情を、スナップ写真で切り取るように、軽やかに表現しています。
左上に顔の見えないスーツの男性は、当時バレリーナを支援していたパトロンです。
ドガはこの作品でも見られるように、しばしば絵の主役を画面の中央から外しています。この左右非対称な構図は伝統的な西洋絵画には見られないもので、日本の浮世絵からの影響であると言われています。
「印象派」のおすすめ関連書籍3選
『イラストで読む 印象派の画家たち』
印象派が活躍した頃の時代背景と、なぜ印象派というものが生まれたのか、ということを、画家同士の付き合いや、それぞれの絵にまつわる話を元に、丁寧に解説しています。
画家たちの人間性がわかる㊙︎エピソードもあり、非常に興味深いです。
また、オールカラーで、見るべきポイントを丁寧に説明してくれるのも読みやすく、印象派をよりよく理解できます。
● 読者の感想
”印象派の画家たちの関係や基質がよくわかる本です。(本当かどうか、作者の主観があるとは思いますが)。楽しく読める本です。”
”印象派の画家ひとりひとりに対する理解のみならずお互いの関係もよく分かりました。イラスト付きで読みやすく、良本だと思います。”
参考
『モネのあしあと 私の印象派鑑賞術』
印象派の画家の中でもモネに焦点をあて、モネが時代ごとに生み出した絵と、その複雑な人生を、当時の時代背景も織り込みながら、すみずみまで伝えてくれています。
彼の画法は、筆致を残す描き方からモチーフの抽象化へと変わっていきましたが、彼の人生の節目と絵の違いがよく分かるよう解説されています。
画家の温かい性格も垣間見える内容ですので、モネファンにはぜひ手に取っていただきたい一冊です。
● 読者の感想
”若い頃はどうしてもカッコつけて、日本人が大好きな印象派って事でだいぶ斜に構えて見ていましたが、みんなが大挙して見にいく程度には自分も素直に観る事が出来る様になった。これでまた、夏にやるモネ展ももっと楽しく鑑賞出来るかな。”
参照
『印象派という革命』
アカデミーという国家権威に対し、印象派は確かに革命でした。印象派が現れ、体制に反発したことで、その後の画家や絵画の可能性が大きく広がったのです。
そんな革命がいかに起こったのか、詳しく解説しています。読み応えのある一冊です。
● 読者の感想
”印象派の絵画を見るなら、この本を読んでから!と強く薦めたい。印象派の絵画になって初めて、個性とか人間味が加味されて描かれるようになったようだ。非常にわかりやすい解説で、興味深い内容だった。”
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