岡本太郎 パリ時代の油絵3枚が新たに見つかる、 回顧展で初公開
今なお世代を超えて人々を惹きつける芸術家、岡本太郎(1911〜1996)。
今回、岡本太郎がパリ留学中に描いたとみられる3枚の油絵が専門家の調査で新たに発見されました。
これまで、岡本太郎のパリ留学時代の初期作品は現存していないと考えられており、今回発見された作品は、彼の原点を示す貴重な資料として注目されています。
今回見つかった3枚の油絵は、2022年7月23日に開始する岡本太郎の大回顧展「展覧会 岡本太郎」で初公開されます。
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パリ時代初期に描かれた3枚の油絵
今回見つかった3枚の油絵は、岡本太郎がパリ留学時代初期(1931〜33年頃)、まだ自身の制作スタイルを確立する前に描かれた作品ではないかと推測されています。
1930年にパリへ渡り、18歳から29歳までの約10年間をパリで過ごした岡本太郎。パリ留学直後の彼は、自身の芸術について思い悩む日々を過ごしていました。
しかし、20世紀を代表する画家、パブロ・ピカソの抽象画を偶然目にし、その場で涙を流すほどの衝撃を受け、抽象絵画の道を志します。
その後、1937年まで「サロン・デ・ザンデパンダン」展に出品するなど、パリで作家活動を続けた岡本太郎。
1937年には初の作品集「OKAMOTO」を出版しますが、その画集に掲載されたのは1934年以降に制作された作品のみで、それ以前に制作された作品については謎に包まれたままでした。
その後、ドイツによるパリ侵攻を受けて1940年に日本へ帰国した岡本太郎。
彼がパリから持ち帰った作品はすべて戦災で焼失してしまい、パリ時代の作品は1枚も現存していないと考えられてきました。
1枚から見つかった「岡本太郎」のサイン
今回見つかった作品は、パリ在住のフランス人男性が保管していたもので、3枚のうち1枚に「岡本太郎」という漢字のサインが残されていました。
2022年2月、岡本太郎に関する資料収集や研究を行う「岡本太郎記念現代芸術振興財団」がパリから作品を取り寄せ、精密な分析を進めることになりました。
科学分析を経て真作と判明
専門家により、3枚の絵の科学分析が行われました。
蛍光X線分析により作品に使われた絵の具の成分を分析した結果、3点の作品に使われている色の成分がほぼ共通しており、同じ作者が同じような絵の具を使用して描いた可能性のあることが判明。
うち1枚に残されていた「岡本太郎」というサインの筆跡鑑定も行われました。
科学分析の結果を基に、岡本太郎に詳しい専門家が集まり、他の作品との類似点や技法などを検討しました。
その結果、岡本太郎本人が描いた可能性が極めて高いと結論づけられたのです。
3枚の油絵は、岡本太郎の画集「OKAMOTO」に掲載された初期作品と似ているものの、筆遣いに迷いがあり、完成度が低いことなどから、20代初め頃に描かれた習作ではないかと専門家たちは推測しました。
「岡本太郎」というサインは、完成を意味するサインではなく、本人の中では未完成の作品であったために、日本に持ち帰らなかったのではないかと推測されています。
岡本太郎は、自身のパリ留学時代について、著作『自分の中に毒を持て』の中で、
迷いつづけていた
自分は一体何なのか、生きるということはどういうことか
と綴っています。
終戦後、出征先の中国から帰国し、日本で作家活動を再開した岡本太郎。
その後は絵画に止まらず、彫刻や家具など幅広い分野に活動を広げ、独自の芸術を築いていきました。
後年は制作活動だけでなく、著作やテレビ出演などを通じて「芸術は爆発だ!」などに代表される力強いメッセージを発信し、彼の残した作品や言葉は、後世に大きな影響を与えています。
過去最大規模の回顧展「展覧会 岡本太郎」
2022年7月23日より、岡本太郎の過去最大規模となる回顧展が開催。
大阪→東京→愛知の3都市を巡回するこの回顧展は、岡本太郎の芸術の本質、人間・岡本太郎を、展示会場の空間体験を通して鑑賞者一人一人が感じ取ることができる体感型の展覧会となっています。
今回発見された3枚の油絵も初公開されます。
パリで芸術を模索していた若き岡本太郎を直に感じることができる展覧会。是非お見逃しなく。
展覧会「岡本太郎」
大阪展
会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日)
休館日:月曜日(9月19日を除く)
※災害などにより臨時で休館となる場合があります。
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
会場:大阪中之島美術館 4階展示室東京展
会期:2022年10月18日(火)~12月28日(水)
会場:東京都美術館愛知展
会期:2023年1月14日(土)~3月14日(火)
会場:愛知県美術館公式HP:https://taro2022.jp
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