仏教宗教建築神道
CULTURE

神社とお寺の違いは?建物の特徴・参拝の仕方など分かりやすく解説

石を投げれば寺社に当たる。

そう思えるほど、日本全国には多くの寺社があります。

その数、約7万6,000の寺院と8万1,000の神社。

清水寺、鶴岡八幡宮、伊勢神宮など観光スポットとして有名な寺社も数多く、普段から気分転換やデートなどで寺社を訪れる人も多いでしょう。

しかし「お寺と神社は何が違うの?」と訊かれると、分かっている気はしていても、具体的に説明するのはむずかしい。

今回は、そんな疑問をスッキリさせるために、お寺と神社の違いを分かりやすく解説します。

 

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「宗教」の違い

お寺と神社、2つの決定的な違いは宗教、つまり「なにを拝むか」です。

 

 お寺=「仏教」
  本尊(主に仏像)を拝む場所

 神社=「神道」
  鏡などの御神体(神が宿るとされる物)を拝む場所

 

神道は日本固有の宗教ですが、仏教は6世紀頃に中国から伝えられた外来の宗教です。

 

神社は「神道」

日本人は、古くから山や岩などの自然物に魂が宿ると信じ、八百万(やおよろず)の神といわれるように数多くの神を崇拝してきました。

菅原道真や徳川家康といった、人物が神となるのも神道の特徴です。

このように、自然の魂を崇拝する「精霊崇拝」と、故人を神として祀る「祖霊信仰」が神道の基礎です。

神道は開祖がいないので明確な聖典は存在しませんが、8世紀に『古事記』と『日本書紀』がまとめられ、それらの文献が信仰の根拠を伝えるものとして残っています。

 

神社の成り立ち

自然物を信仰していた日本人は、神が鎮座する神聖な場所に一時的な「祭場」をつくるようになりました。

風雨をしのぐなどの目的で建物がつくられ、中国の寺院建築の影響も受けながら、神の御霊(みたま)を祀るための場所として、神社の建築構成は整えられていきます。

 

神社の名前はほかにも、神宮・宮・大神宮・大社・社の計6種類あり、規模や格式の違いにより名前が区別されます。

最高位は伊勢神宮などに代表される「神宮」です。

 

お寺は「仏教」

神道に開祖はいませんが、仏教は古代インドで生まれたブッダを開祖とする宗教です。

ゴータマ・シッダールダがブッダの本名で、ブッダというのは「悟りをひらき、人々救うもの」の意味。

インドで生まれたブッダ(紀元前6~5世紀)は長年修行を積み上げ、35歳ですべての人々が苦しみから解放される真理を得ました。

 

ブッダが弟子たちに教えを説いた時点から仏教は始まり、少数の信者達からやがて大きな教団へと発展、大陸から中国を経由して日本に伝来しました。

仏教ではブッダをはじめ、悟りを開いた「仏」を信仰の対象としています。

天台宗・真言宗・鎌倉新仏教など宗派は様々に存在しますが、ブッダ(釈迦)を教祖としている点は共通です。

ブッダの教えから始まった仏教には、その後の弟子達によって多様な解釈が生じたため、経典が無数に存在します。

 

お寺の成り立ち

日本のお寺は仏教が日本に伝来したことに始まり、国家鎮護の祈願所としてスタートしました。

仏の説いた教えである仏法に従えば国を護り鎮められるという考えのもと、経典研究が中心の学問的な仏教を学ぶ寺院が創建されました。

 

願望の違い

仏教を信仰する僧侶が仏教の教義を学んだり修行をしたりする場所がお寺、神が住まう場所が神社です。

そのため、お寺と神社の参拝目的や願望の内容は異なります。

 

神社では神に感謝を伝え現世での幸せを祈りますが、仏教では現世での幸せとともに死後に極楽浄土へ行けるよう願うこともできます。

 

建物の違い

神社は「藁葺き屋根」

神社とお寺を見分けるには屋根を見るのが一番です。

神社では茅(かや)・檜(ひわだ)・柿(こけら)など自然の材料で屋根が作られ、現代においてもその影響は色濃く残っています。

 

日本人の「木」に対する信仰から、基本的に屋根以外には木材が使われます。

 

また、神社屋根の特徴的な部位として千木(ちぎ)堅魚木(かつおぎ)があげられます。

神社は鳥居から抜け参道を進むと拝殿に行き着くのが一般的で、御神体が祀られる本殿は拝殿の背後に佇んでいる場合が多くあります。

参道の両方には社務所神楽殿手水舎狛犬などが並びます。

 

神社建築の主な構成要素

拝殿
 礼拝のための施設
 小さな神社では拝殿がなく本殿を直接拝むところも多くあります

本殿
 神が鎮座する最も重要な場所です
 普通は拝殿の奥にあり、その存在を認識していない参拝者も多いでしょう

摂社・末社(せっしゃ・まっしゃ)
 主祭神と関係する神を祀ったり、維持が難しくなった地域の有力な神社に統合したりと、由緒も規模もさまざまです

神楽殿・舞殿
 祭礼の祈りに舞楽を演奏するなどして神に奉納します
 中世以降に、芸能や儀礼が整備されるとともに生まれた施設です

手水舎(てみずや)
 手を洗い口をすすぎ、身を清めるための施設
 昔は神域を流れる小川で同じことをしていたのでしょう

 

お寺は「瓦屋根」

仏教は中国を経由してきた宗教なので、同じく大陸から入ってきたが屋根に使われます。

中世以降は寺院の建築様式が多様化し、木材以外の建材も用いられました。

お寺の建築様式は宗派や時代によって異なりますが、代表的なのが法隆寺です。

 

仏像を納めた金堂(左)と仏舎利(ブッダの遺骨)を納めた塔(右)が並列にあり、全体のバランスがとれています。

 

大きなお寺は修行僧を多く抱えるようになると、生活の場として食堂などの建物が必要になり、七堂伽藍(しちどうがらん)と呼ばれる、建物をいくつも備える形となりました。

 

寺院建築の主な構成要素(七堂伽藍)

ソース

金堂(こんどう)
 本尊を安置する、お寺の中心となる建物。


 仏塔、または仏舎利塔と呼ぶ
 「塔」の語源は「ストゥーパ」という言葉で、「天と地を結ぶ」という意味
 一般的には、仏舎利をあらわす宝珠(ほうじゅ)を納める

講堂
 仏教を講義したり、経典などを学び講義する場所

経蔵(きょうぞう)
 書物や経典を納める場所

鐘楼(しょうろう)
 時間を知らせる釣鐘

食堂
 僧侶が食事をとる場所

僧房(そうぼう)
 僧侶が生活をする場所

 

入り口の違い

俗界から隔たれた神社・お寺にとって、入り口は境界の役割を果たします。

 

神社は「鳥居」

神社のシンボルとして地図記号にもなっている鳥居。

参道の始まりにあり、これより先は神々が降臨する神域です。

 

基本の形は、2本の柱の上に笠木を渡し、その下の貫が柱同士を連結します。

笠木と貫の間に新額または扁額(えんがく)と呼ばれる額を備え、多くは神社の名前が刻まれています。

 

鳥居の起源は明らかではありませんが、大きな岩に隠れた太陽神・アマテラスオオミカミを誘い出すために、鳥を木にとまらせ鳴かせたから、という説も。

 

お寺は「山門」

山門は寺院の正式な入口で、その先は仏の国と考えられています。

山門をくぐり心を清めることで、美しい心で仏と向き合います。

 

「空・無相・無作」の悟りの境地=三解脱(さんげだつ)の意味で「三門」と書かれる時もあります。

山門と書かれるのは、寺の多くが山に建立されたことに由来するそうです。

 

守衛役の違い

お寺は「仁王像」

寺社に行くとついその存在を確かめたくなるのが仁王像

お寺に行って筋骨隆々の仁王像がいるとテンションが上がりますよね。

 

口をアの形にひらいた阿形(あぎょう)と、ンの形に閉じた吽形(うんぎょう)

仏敵の侵入を防ぐため山門の左右に置かれる一対の像で、正式には金剛力士像といいます。

一番有名なのは、東大寺南大門の像(上画像)。

阿形像は大仏師・運慶と快慶が小仏師13人を率いて造立し、吽形像は大仏師・定覚および湛慶が小仏師12人を率いて造立したことが明らかになっています。写実性に優れ、迫力ある仏像です。

 

神社は「狛犬」

鳥居から拝殿までの参道脇におり、魔物を追い払う役割を担うのが狛犬

古くから狛犬は霊獣とされ、神域に邪気が入るのを防ぐ魔除けとしての役割を担ってきました。

 

人々は狛犬の魔除けの力を借り、身体の痛むところがあると狛犬の前にお賽銭を捧げ、痛みのもとになっている「魔」を封じてもらえるよう祈願したそうです。

神社によって狛犬ではなく狐(稲荷神社)や鹿(春日神社)など、別の動物が代わりになる場合もあります。

 

聖職者の違い

お寺は「僧侶」

お寺の聖職者は、僧侶(そうりょ)です。

住職とも呼びますが、住職はお寺を責任する僧侶を指します。

宗派によって僧侶の役割は異なるものの、仏の国で人々を指導し念仏を唱えるといった先導的な役割を果たします。

 

神社は「神職」

神社で人と神とのあいだを取り持つ存在が神職(しんしょく)です。

神社の祭祀や経営を行う職員で、祈祷の際に祝詞(のりと)を読み、祀りごとを取り仕切ります。

 

神職になるには、大学で神道学科の必要課程を修了し、その後実習を経て、階位を与えられるのが一般的な流れなのだそう。

宮司は神社の責任者を務め、神職と職員をまとめる役割を担います。

俗にいう「神主さん」とは神社の主を意味する言葉で、役職名ではないので注意しましょう。

 

参拝の仕方の違い

参拝者は境内に入ったらまず、手水舎で身と心を清めます。

その後、拝殿または本殿で賽銭をささげる。

ここまでの参拝方法はお寺も神社も一緒です。

お寺と神社での参拝方法の大きな違いは、拍手(かしわで)の有無。手を叩くか否かです。

 

神社の参拝の仕方

神社は、二礼、二拍手、一礼。2回拍手(かしわで)を打ちます。

神社の参拝手順

①お賽銭を賽銭箱に入れる

②鈴がある場合は鳴らしてから、状態を90度に深く折って二度お礼をする

③落ち着いて二回手を打ち、手を合わせたままお祈りする

④願い事や他の人の幸せを伝え、最後に深く一礼して退く

 

手を打つのは、神様に気づいてもらうためという説もあります。

拍手や礼の数が異なる神社があるのでご注意ください。

 

お寺の参拝の仕方

お寺の正しい参拝方法は胸の前で合掌し、かるく頭を下げるだけ。間違えて柏手を打たないように気をつけましょう。

お寺の参拝順番

①お賽銭を賽銭箱に入れる

②鰐口(わにぐち)があれば鳴らしてから、手を叩かず、胸の前で合掌して祈る

③最後に一礼して退く

 

合掌という所作はインドが発祥で、右手(仏の世界)と左手(現世)を合わせ仏の世界と現世が一体となり、成仏を願う気持ちを表すといわれます。

 

長い間お寺と神社は一緒だった?!

そもそもなぜ、お寺と神社の違いが分かりにくいのでしょうか。

その主な原因は、日本人がこれまでの歴史において、神仏習合神仏分離を経験しているからです。

 

神仏習合

先述したとおり、日本の宗教は神道から始まりました。

そこに外来の宗教が持ち込まれ、「明日から信じてきたものが変わります!」と伝えられれば人々は混乱します。

そこで神と仏を調和させ、同一視する思想=神仏習合が生まれました。

中期になるとこの思想は強くなります。

 

神は仏が世の人を救うために姿を変えて現われたとする本地垂迹(ほんじすいじゃく)の思想が成立し、神に仮の姿という意味の権現(ごんげん)の称号が与えられました。

例えば、源頼朝と北条政子の逢瀬の場所として有名な伊豆山神社は、もともと伊豆山権現という坊を多くもつお寺でした。

 

神仏分離

しかし、その考え方は明治時代以降に大きく変わります。

明治政府が神道を国の宗教とするため、神仏習合の思想を禁じ、お寺との分離を図る宗教政策として神仏分離の令を打ち出しました。

 

権現の名を冠したお寺は神社と名乗るようになり、両者は区別されます。

しかし、神仏習合の時間があまりにも長かったため、完全な神仏分離とはならず、神社に行くとお寺にあるはずの建物があったり作法が似ていたりと、2つの違いがわかりにくいのです。

 

まとめ

ここまで宗教・建物・参拝方法など、お寺と神社の違いを解説しました。

大きな両者の違いは、神道と仏教どちらを信じるかで、宗教が建築や参拝方法などに影響しています。

神社仏閣の特徴的な要素、両者の違いを理解することで、これから神社やお寺を訪れるひとときがより味わい深いものになれば幸いです。

 

 

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