2018/03/05
アート/Art

0から学ぶ西洋美術史 ~ヴェネツィア・ルネサンスとマニエリスム編~

ヴェネツィア ルネサンス 美術史

 

前章ではレオナルド・ダヴィンチをはじめ、ラファエロや、ミケランジェロが活躍したローマを中心にご紹介しました。

 

↓前回の記事はこちら↓

0から学ぶ西洋美術史~盛期イタリアルネンス編~

 

16世紀ルネサンス芸術のもう一つの舞台

ヴェネツィアを中心に解説したいと思います。

 

ヴェネツィア芸術の開花

 

前回から少し時代を遡った初期ルネサンス期(15世紀半)、

フィレンツェルネサンス開花し

ボッティチェリが活躍していた時代になってもヴェネツィアはその流れに乗ることはできずにいました。

 

これは、ヴェネツィア東方貿易によって、

ビザンティン文化に早くから支配されており、独立国として保守的な社会を形成していた為です。

 

しかし、ビザンティン文化の中にも少しずつ、

ルネサンス的な優しい人間的な描写が開花し始めます。

 

その後は、ヴェネツィア派と呼ばれる画家が多く生まれました。

 

ヴェネツィア派の祖とされる、

ジョバンニ・ベッリーニ作、「聖フランチェスコ」を見てみましょう。

 

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ジョバンニ・ベッリーニ作、「聖フランチェスコ」

 

聖フランチェスコを主人公に描いた宗教画ですが、

注目してほしいのは、背景の自然風景です。

 

今まで宮廷的恋愛の舞台として、また花鳥の集う幻想的な物語の背景として、自然は絵画の裏方的存在でした。

 

しかし、この絵画ではむしろ自然風景の方が画面の大部分を占めており、

絵画の主題からは独立した存在感を持っています。

 

ヴェネツィアは沼地に造られた人工島であったため、

人々の自然への思い入れはひと一倍強いものでした。

 

自然主義は、ヴェネツィアに当時浸透していたルネサンスの人文主義によって詩的な風景・理想郷への憧れとなり、絵画や詩においてより追求されました。

 

時は流れ盛期ルネサンスの15世紀末、

このヴェネツィア芸術をベッリーニにから受け継ぎ、さらに発展させた画家の一人が、

ヴェネツィア・ルネサンス最大の画家ティツィアーノです。

 

彼の名声を確かなものにした作品「ペーザロ家祭壇画」を見てみましょう。

 

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ティツィアーノ作「ペーザロ家祭壇画」

 

ラファエロの聖母子像を思わせる美しい聖母と愛らしい幼児キリストを囲んで、

聖ペトロらの聖人たちが集う祭壇画を描いています。

 

耳をすませば、背後に見えるがっしりした円柱ごしに、ヴェネツィアの海の喧騒がこちらに届くような気がします。

 

また興味深いのは、前景に寄進者であるペーザロ一族が肖像として挿入されている点です。

 

宗教性と世俗性が堂々と、しかも美しくまとめられたこの作品は、

華麗な色彩の用い方と相まって、16世紀ヴェネツィア絵画の性格をよく物語っています。

 

詩情豊かな風景華麗な色彩表現というヴェネツィア派の特色は、

ティツィアーノによって確かなものになります。

 

そして、その伝統はさらに深い精神性を帯びて2人の重要な画家、

ティントレットエル・グレコに受け継がれます。

 

ティントレットは

ティツィアーノ的な色彩と、ミケランジェロの素顔

をモットーにしていたといいます。

 

ティントレット作「聖母マリアの神殿奉献」を見てみましょう。

 

Madonna dell'Orto (Venice) - Presentation at the temple of the Virgin (1552-1553) by Tintoretto
ティントレット作「聖母マリアの神殿奉献」

 

幼い少女の方に手を置き、神殿の上のマリアに注意を促す女性。

 

体を捻るポーズといい、力あふれる背中の表現といい、

まるでミケランジェロの彫刻や絵画の日賃貸のようです。

 

一方それぞれの人物が身に付けている衣の柔らかい光沢ある表現や豊かなその色彩といった表現はヴェネツィア派のものです。

 

と同時に、彼はもう一つ新しい特色を示しています。

この後ろ向きの女性の頭上から舞台の照明のような光が差し込んでいます。

これはティントレットが得意とした、情景をドラマチックに演出する光です。

 

ティントレットが活躍した時代は、カトリック教会が新しい宗教改革に対抗する時代でもありました。

そのために、絵画により神秘的な表現が求められるようになったのです。

次は、ティティアーノの伝統を受け継いだもう一人の画家エル・グレコの「オリーブ園の苦悩」をみてみましょう。

 

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彼もヴェネツィア派に影響を受けた一人ではあり、この絵のキリストが苦悩する情景が天使の神秘的な光によって暗い背景からくっきりと浮かび上がっています。

彼の描く人物はどれも皆、線長く引き伸ばされ、重量感や生活感のある人間ではなく、むしろ魂のイメージとでもいった精神的存在としての性格を強く持っています。
これは次に述べるマニエリスムの特徴の1つで、エル・グレコはそれをさらに独自のものに発展させたのです。
こうした神秘性の強い彼の現実は、17世紀に広まるバロック美術の先駆けと考えられています。

 

 

新しい時代の幕開け~マニエリスム芸術~

 

レオナルドラファエロが相次いで様去った頃に、彼らが推進した古典主義とは別の、マニエリスムと呼ばれる新しい芸術がイタリアで芽生えつつありました。

この語源となったイタリア語の「マニラ」は”礼儀作法”と言う意味であるが、特に美術では宣伝優雅さ、気候などを強調した一種の気取り、あるいはスタイルといった意味になります。

この時期の芸術家たちはラファエロミケランジェロらの現実を基盤として、そこに際立った独創性を使い加えようとします

 

マニエリスムの代表画家を紹介しましょう。

 

一人目は、フィレンツェの画家ポントルモです。

多くの画家が同じように描いてきた作品「聖ヒエロニムスの悔悛」をみてみましょう。

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砂漠で修行を続ける聖人を描いていますが、最も奇妙な印象を与える作品です。

ゴム人間のように体をくるりと回転させ不安に満ちた表情で十字架に視線を投げています。

 

ひたすら祈りを続けるこの奇妙で、狂気ともいえる精神的情熱がとても強調されていますね。

これは、ポントルモ自身が神経が過敏で孤独を好んだと伝えられていますが、だからこそ彼独自の内面的ビジョンを作品に提出することができたとも言えます。

 

 

2人目のマニエリスムの画家は、同じくフィレンツェで活躍し、後にフランス王に招かれたロッソ・フィオレンティーノです。

 

代表作「ピエタ」です。

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聖母に見られるきつい色彩表現人物の誇張された光の表情に彼独自のスタイル、つまりマニエリが現れているのがおわかりいただけるだろうか。

彼はフランス宮廷で重要されていたにもかかわらず、なぜかその後自殺してしまいます。

他にも、パルマの画家パルミジャニーノは、晩年錬金術にはまってしまい、発注主から訴えられるというエピソードがあります。

マニエリスムの芸術の特徴として、こうした制度を踏み外すエピソードが多いですが、それはまたマニエリスム芸術の性格にも当てはまるのでしょうね。

このような芸術家による自由な発想の追求は、当然の結果として、古典主義からの逸脱をもたらしました。

 

 

イタリアからフランスへ~国際マニエリスム~

イタリアが、ルネサンス・マニエリスムと芸術を開花していく一方で、フランス芸術は未だ未開拓状態でした。

それを変えたのが、芸術擁護者であった、フランス王フランソワ1世でした。

彼は、イタリアから多くの芸術家たちを招き入れ、まだ未成熟であったフランス芸術を復興させます

こうしてイタリアのルネサンス芸術、とりわけマニエリスム芸術がフランスにも移植され、後のフォンテーヌブロー派が誕生します。

この時代は宮廷芸術だったため、主題としては神話画やがほとんどではありましたが、特に裸婦を中心としたエロティックな風俗側で完成度はまだイタリアにもそれに及ばないものの、彼女らが見せるコケティッシュな表情は魅力的であり、それがフォンテーヌブロー派の性格をよく表しています。

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フォンテーヌブロー派「ガブリエ・デストレと姉妹たち」1590年

 

また、イタリアに端を発したマニエリスムが16世紀後半には国際的に広まることから、この時期を国際マニエリスムの時代ともいえます。

14世紀末の腰臭い国際ゴシックと同様、ここでも宮廷が芸術様式伝説の未来とつなぎになったのですね。

特に有名なのは、ウィーンやプラハといった神聖ローマ帝国の宮廷に迎えられたアルチンボルドです。日本でも、以前上野でアルチンボルド展が話題になりましたよね。

彼はもともとミラノ大聖堂でステンノステンドグラスの下絵家として活躍していましたが、神聖ローマ皇帝に気に入られて宮廷に招かれ、そこで彼の基礎が花開きます。その1つ「大地」の独特の間にフェラスタイルは、彼がマニエリスムの描かれることを物語っています

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確かに気持ちの悪い着物作品かもしれませんが、動物を組み合わせて大地を擬人像にする表現するアイディアは斬新であり、皇帝たちが彼の芸術は移行した理由がよくわかります。

 

まとめ

 以上が、ヴェネツィア芸術の発展と、ルネサンス芸術の発展でした。

このように、様々な場所でその土地の文化にあった芸術が開花されていきます。

そしてこのルネサンスの波は、アルプス以北の国々、北方まで及び北方ルネサンスが開花します!

次回は、北方ルネサンスを紹介しようと思います!さすがルネサンス、まだまだ続きます。

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