ダヴィンチモナ・リザ美術史
ART

複製のモナ・リザが4億円で落札!?知られざる複製画の価値について詳しく解説

世界で最も有名な絵画であると言っても過言ではないレオナルド・ダ・ヴィンチの傑作「モナ・リザ」。

この作品は当然のことながら、最も多く複製されている絵画の一つでもあります。

16、17世紀の画家たちは、ダヴィンチの描いたモナ・リザを模写し、彼の高度な描写力を学びました。

モナ・リザの複製画は世界中に数十点存在することが知られており、うち数点は美術館でも展示されています。

 

複製画はアートオークションにも数多く出回っていますが、そのうちの1点が2021年11月にパリのオークションハウス「Artcurial」で開催された「Old Masters & 19 Century」のオークションに出品され、日本円でおよそ2,700万円という高額で落札されました。

同年6月にも別の複製画が、日本円でおよそ4億円という複製画としては前代未聞の高額で落札されています。

 

複製画にこのような高い価値がつく理由は何なのでしょうか?複製画の価値とその理由について詳しく解説していきます。

 

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複製画と偽物(贋作)の違い

複製画とは、本物の原画を模範したものであり、偽物、いわゆる贋作(がんさく)とは異なります。

原作と同等の価値がつくことはありませんが、それと同等のクオリティがあり「模写作品」としての価値が認められます。

 

もちろん原画と複製画の持つ価値は全くレベルが異なりますが、制作者が模写を描くために行った研究のプロセスや、再現性、作品自体の質といった価値が認められれば、資料的価値の高い作品として評価されます。

 

一方、贋作とは悪意のある者によって本物であるかのようにアートマーケットに出品され、売買されたものです。

これは正当な犯罪であり、現在アートマーケットに流通している美術品の半分以上は偽物であるとも言われています。

 

本物のモナ・リザは1519年のダ·ヴィンチの死後、フランス王のフランソワ1世が購入し、フランスの国有財産になっています。

現在はパリのルーヴル美術館で常設展示されており、人々はモナ・リザを一目見るためにルーヴルを訪れる人も少なくありません。

フランスがモナ・リザを今後手放すことは考えにくい上に、万が一オークションに出品されたとしても桁違いの額になるのは誰もが予想できます。

そのためアートコレクターや財団、美術館はオリジナルに近い複製画を手元に置こうと、オークションでモナ・リザの「模写作品」を求めるのです。

 

複製の「モナ・リザ」

世界で最も有名なモナ・リザの複製画は、スペインのプラド美術館に常設されています。

この作品はダ·ヴィンチの弟子が、本物が描かれた年代と同時期に、ダヴィンチの工房で描いたものだと言われています。

弟子が技能習得を目的に、師匠の作品を模写したものが後世に残っていることは美術史的にもよくあるケースです。

制作依頼者(パトロン)に作品を渡す前に、自分の手元にも残そうと描いたケースや、名画と言われる作品が実は複数制作されていた、また画家自身が研究のために描いたケースなどもあります。

 

ダヴィンチ自身が描いた複製のモナ・リザも残っており、この作品は現在、匿名の財団が所蔵しています。

 

4億円で落札された複製のモナ・リザ

2021年4月に4億円もの高額で落札され、大きな話題となった複製のモナ・リザ。

この作品はアートコレクターのレイモンド・ヘッキングが所有していたことから、通称「ヘッキングのモナ・リザ」と呼ばれています。

1950年代、彼はこの作品をフランス、ニース地方の骨董屋で購入しました。

本物のモナ・リザが制作されてから約100年後の17世紀初頭に制作されたもので、作者は不明です。

 

なぜ4億円もの落札価格が付いたかと言うと、過去にヘッキングが「自分が所有するモナ・リザこそ本物である」と主張し、それが大々的に報道されたという経緯があるからです。

 

1911年、ルーヴル美術館のモナ・リザは盗難事件に遭っています。

その2年後に犯人は捕まり、作品は無事にルーヴルへ戻りましたが、「戻った本物のモナ・リザはすり替えられたものだ」とヘッキングは声高に主張していました。

彼は自分のモナ・リザの信憑性を高めるために、1960年代にアメリカ・ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリーやメトロポリタン美術館へ作品を貸し出すなど、アート業界から支持を得るための活動もしていました。

 

彼のモナ・リザはその後の鑑定により本物ではないことが発表されましたが、数世紀の間人々が彼の主張を信じ、美術館で鑑賞されてきたというストーリー自体に価値を認め、作品を求めるコレクターは多いのです。

本物のモナ・リザが100年経った後でも後世にインスピレーションを与えている名画であることを証明する作品としても、複製画としての価値が高く評価されています。

 

この作品は2011〜12年に日本にも来日しており、Bunkamura ザ・ミュージアム、静岡市美術館、福岡市美術館で展示されました。

 

2,700万円で落札された複製のモナ・リザ

2021年11月に2,700万円で落札された複製画は1600年頃に描かれたもので、作者は不明です。

落札額はヘッキングのモナ・リザには及びませんでしたが、十分に価値があると言われています。

 

この作品はオーク製のパネルに描かれており、本物のモナ・リザもキャンバスではなく木のパネルの上に描かれていることから、複製画としての価値が上がる要素になります。

 

また、この作品が原画を目の前にして精密に描かれていることが何より重要なポイントです。

画家が本物のモナ・リザに近づいて作品の細部まで観察することができたこと。原画そっくりに模写する高い技術力と再現性を兼ね揃えていることが作品から見てとれます。

原画に忠実であることは複製画の価値として非常に重要なポイントで、忠実であればあるほど高く評価されます。

 

今回オークションを開催したArtcurial社の専門家は、

この巧みに描かれた繊細な複製画は、フランソワ1世が手に入れた本物のモナ・リザと同じ環境、

つまり、アンリ4世の時代にフォンテーヌブロー第2派と呼ばれる才能ある芸術家たちが集まっていたフォンテーヌブロー宮殿で描かれたと想像するのが妥当だと思います。

と説明しています。

 

フォンテーヌブロー

 

ヴェルサイユと並ぶパリ近郊の王室の宮殿がある都市で、フランソワ1世がルネッサンスの時代にイタリアから芸術家たちを呼び寄せて宮殿を作ったことで有名です。

イタリア・ルネッサンスの芸術はこのような形でフランスに移植され、16世紀中頃から17世紀前半頃(1620年代頃まで)まで続いたフランス独自の宮廷美術様式と、そこで活躍した芸術家たちのことを美術史では「フォンテーヌブロー派」と呼びます。

フランソワ1世の時に始まったフォンテーヌブローを第1派、1600年前半のアンリ4世の下で行われたのをフォンテーヌブロー第2派と呼びます。

 

原画の構図にほぼ忠実でありながら、画家はこの作品に独自のスタイルもさりげなく取り入れています。

手や顔の肌色は繊細に表現されていますが、顔の形、あご、くびれ、指の関節などはブラシの跡が見えるように塗られ、強調されています。

また、モナ・リザの袖や背景の岩場の描写には、本物よりもやや生々しい感性が感じられます。

 

世界を惑わし続ける名画「モナ・リザ」

モナ・リザ
ソース

複製画としての価値は、作品自体の来歴や画家独自の技法も合わせて、1つのアート作品として評価されることがお分かりいただけたかと思います。

しかし、複製の作品にここまでの価値がつくのは原画がモナ・リザだからとも言えます。

人を魅了し続ける「モナ・リザ」。

今後もアート業界全体にインスピレーションを与え、世界を惑わす名画であり続けることでしょう。

 

 

 

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