現代社会の風刺画25選!バンクシー、ホアン・コルネラなど有名アーティストの作品を紹介
痛烈な政治および社会への批判を、絵画というソフトな手法で表現する風刺画。
戦前は政治批判的なものが多く見受けられましたが、時代が進むにつれてSNSなどの身近な社会問題に焦点が当てられていくようになります。
今回はそんな現代社会を風刺するアーティストと、その作品を紹介します。
歴史的に有名な風刺画はこちら
「アート診断」
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Banksy(バンクシー)
世界的に有名なグラフィティアーティスト、バンクシー(Banksy)は、ロンドンを中心に活動する正体不明の覆面アーティスト。
世界各地に現れては、「反資本主義」「反権力」など強いメッセージが込められた作品を壁面に書き上げています。
2018年、サザビーズのオークションで「風船と少女」が1.5億円で落札されたのち、額に仕込まれていたシュレッダーで作品が切り刻まれた「シュレッダー事件」で知られています。
「Laugh now, but one day we’ll be in charge」
バンクシーがまだ無名だった時代に描かれた作品。
首に下げている看板には「Laugh now, but one day we’ll be in charge(今は笑え、でもいつか自分たちが取りまとめるようになる)」と書かれており、社会的地位の低い若者の心境を表した作品とされています。
「赤い風船と少女:Girl with Balloon」
『赤い風船と少女』はバンクシーが長年描き続けるモチーフの1つです。
希望の象徴であると言われる赤い風船。
少女の手が「希望に届きそう」なのか「離れゆく希望」に手を伸ばしているのかという解釈の曖昧さが残されているのが、この作品の魅力の1つです。
「Napalm:ナパーム」
中央に描かれた少女は、1972年6月8日に撮影されたベトナム戦争でアメリカの空爆から逃げる子供達の写真から抜き出されたものです。
少女の手を引くのはアメリカ資本主義を代表する「ミッキーマウス」と「ロナルド・マクドナルド」。
「アメリカ化」「グローバル企業による児童労働と搾取」「戦争」などに対する、バンクシーの強烈な皮肉とメッセージを感じます。
「落ちるまで買い物をする:Shop ‘til You Drop」
ロンドンの高級ショッピング街のビルに描かれた作品。
落下しているしているにもかかわらず、カートを握りしめ続けている女性の様子からは、「消費社会や格差社会」への風刺を表現しているように受け取れます。
高層ビルのかなり高い場所に描かれていることから、どのようにして描かれたのかも話題になりました。
「Game changer」
2020年5月7日、新柄コロナウイルスの影響でロックダウン中の英サウサンプトン総合病院に送られた作品。
バットマンやスパイダーマンなどの国民的ヒーローを置き、看護師の人形で遊ぶ少年の姿は、パンデミックに見舞われた新しい世界でのヒーロー像の変化を表現しているように見受けられます。
発売日 : 2007/6/5
グラフィティ・アーティストのバンクシーの代表作をまとめたフルカラー作品集。
Joan Cornellà (ホアン・コルネラ)
現代社会やSNSを痛烈なブラックユーモアとシュールで風刺するスペインの漫画家・イラストレーターのJoan Cornellà (ホアン・コルネラ)。
同じ顔・表情のキャラクター、グロテスクな表現など、思わず顔を歪めてしまうような作品にもかかわらず、ポップなタッチとブラックな表現のギャップで日本でも何度か個展が開かれるほど人気の作家です。
「間抜け」
額に当てられた体温計に「IDIOT(間抜け)」と表示されている作品。
コロナ禍でどこへ行くにも体温測定と陰性証明書を求められる日々や、政府の対策、政府の要請を守り自粛する人・しない人。
これらに対して、コロナ禍でどう感じてきたかでこの作品に対しての見方が変わります。
「胎内回帰」
まだへその緒が繋がったままの赤子が、現大統領とアメリカの様子を窓から眺め、笑顔で胎内へ戻っていきます。
ドナルド・トランプが大統領選に当選したという事実に対する、世間の絶望が伺えます。
「セルフィー文化の末に」
荒廃した大地で、爆撃で燃える家や人々を背に栄養失調と思しき子供と自撮りをする女性。
不謹慎な現場や死体と自撮りを行うなど、倫理観の欠如した行き過ぎたセルフィー文化を風刺しています。
「撃ち殺したのは私だ」
人種差別問題を強烈に皮肉った作品。
黒人に見立てられた女性を発見した警官が、「撃ち殺したのは自分だ」と誇らしげに女性に乗り上げているように見受けられます。
警官に取り押さえられた黒人男性が死亡するという痛ましい事件は記憶に新しいかもしれません。
「持続可能なエネルギー」
エコという言葉に盲信的になっている人々を悪意とユーモアたっぷりで風刺した作品。
排泄物で抱いた不快感が、エコマークひとつで解消されて納得している様がなんとも滑稽です。
石田徹也
現代日本の社会の抱える不安や孤独を描いた日本の画家石田徹也。グランプリでの受賞を機に、国内外でその名を知られるようになった矢先、人身事故により31歳という若さでこの世を去りました。
そんな石田徹也の作品には、無表情で生気の感じられない青年が、日本の社会に適応しようとする不安と孤独感が一貫して描かれています。
「燃料補給のような食事」
飲食店の店員がカウンター越しのサラリーマンに、ガソリンの給油機のようなもので食事をさせている様子が描かれた作品。
仕事に追われ、食事の持つ「楽しさ」も「喜び」も忘れ、ただ生きるために機械的に食事を行う姿に、自分を重ねてしまう人は少なくないかもしれません。
「荷」
満員電車に箱のように詰められたサラリーマンを描いた作品。
社会に適応していく中で、本来の人の形を失い四角く矯正されている様子は、社会人になる前の自我が社会の枠に収まる形に矯正されてしまう日本の社会を表現したものと思われます。
「大車輪」
自転車の車輪とバラバラになった体を繋ぎ合わせたような作品。
ネクタイを閉めようとする所作から、身も心もバラバラになっても走り続けなければならない日本のサラリーマンの現状を表しているように見えます。
「兵士」
傘をライフル銃のように構え、ビル街に身を潜めるサラリーマンの様子は、塹壕戦の兵士を思わせます。
表情や負傷している様子から、心も身体も限界がきているにもかかわらず、社会という戦場で戦い続けなければならない無情さが伺えます。
「ただの部品ですから」
サラリーマンが部品として壁に打ち付けられえている様子を描いた作品。
体の角度から「最初は人の形だったが、頭を下げ続けているうちに人間ではなくなってしまったのではないか」という想像ができ、他人事とは思えない恐怖を感じさせます。
発売日 : 2010/5/1
現実の何かに光を当てる絵を描きたい。31歳で急逝するまで、石田徹也がすべてを費やして描き上げた総217点の作品群を一挙掲載した待望の全作品集。
John Holcroft(ジョン・ホルクロフト)
レトロな画風で現代社会を風刺するイギリスのイラストレーター、John Holcroft(ジョン・ホルクロフト)。
John Holcroftのイラストは、SNSなどの現代社会のシステムや欲望に対するメッセージが非常に強くわかりやすく描かれている一方、ヴィンテージ風のタッチのおかげで親しみやすいのが特徴です。
「承認欲求の犬」
Facebookの「いいね」アイコンがペットフードのように出されているイラスト。
「いいね」という餌を喰らい承認欲求を満たすことに依存し、ペットのように手なづけられている現代の人々を表現しているように見えます。
「燃え尽きるまで働いて」
サラリーマンをマッチ棒に見立てているイラスト。
何人も同じサラリーマンがいることから、代わりはいくらでもいるのでしょう。文字通り、燃え尽きるまで使い潰されてしまう非情な社会を描いています。
「HAPPINESS KIT」
笑顔の男女の写真に「HAPPINESS KIT」と描かれた箱の中には、プラモデルのように幸せになるためのキットが入っています。
しかし中には、ゲームやタブレットなどの物質的なものばかり。愛や夢などを思わせるものはなく、パッケージ化された「幸せ」で良いのでしょうか。
「お金で動く医師」
お金を入れないと動かない医師。
「命を救いたい」「病人を治したい」という気持ちで従事している方がいる反面、「お金のために」医者を少なくはないかもしれません。
「身を削って働く」
「お金を生み出すためだけの人生」になってしまっている人は、現代社会では少なくありません。
この砂時計をひっくり返すと「お金で健康を買う」という富裕層を彷彿とさせる構図が浮かび上がるのも面白いですね。
Igor Morski(イゴール・モルスキー)
ポーランドのポーランドのグラフィックデザイナー、イラストレーター、セットデザイナー のIgor Morski(イゴール・モルスキー)。
温暖化や電子機器に依存する現代社会などをリアルなタッチで風刺した作品を描く作家です。
「監視社会」
どこにいても監視の目から逃れられない現代の監視社会を風刺した作品。
ゴキブリに背負われた監視カメラは、「どこにでも」「無数に存在する」ということを表現していると思われます。
「文明は労働に上に」
労働者と思しき男性の背中に文明が成り立っている構図。男性の体は侵食されて大きな空洞が空いており、今にも崩れそうです。
「労働者の犠牲の上に成り立つ文明」と「社会の基盤が崩れかけている現代社会」の両方の見方ができる作品です。
「資本に燃やされる地球」
自ら火を起こし、薪を加えて、地球を熱し続ける人たち。
「自然を守ろう。地球を守ろう。」という呼びかけの声も虚しく、今も地球温暖化の進行は止まることを知りません。
資本主義的な欲求が全てを燃やし尽くしてしまうのでしょうか。
「大人の形」
社会や親に決められた形にしか成長を許されない環境に対する風刺画。
筋骨隆々の男性の形をしたカゴの中に囚われている少年。
その周りには、車のおもちゃやエアガン、望遠鏡など男の子っぽいものが散らばっています。
「時間の奴隷」
時計の針によってマリオネットのように操られている男性を描いた作品。
私たちはつい「何時になったら〜をする」と考えてしまいがちですが、したい時ではなく時間を基準に考えてしまっている時点で、もう操られているのかもしれません。
まとめ
今回は現代社会の風刺画を紹介しました。
鋭く、人間の矛盾や実態を描く風刺画に他人事とは思えないと感じた人もいるのではないでしょうか。
激しく変化する現在の社会の中で、今後どう風刺画が変化していくか楽しみですね。
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