シティポップとは?70年代・80年代の名曲とアーティスト、名アルバムを詳しく解説
YouTube、音楽配信サービスの台頭により、竹内まりやの「プラスチック・ラヴ」が海外の音楽ファンの間で大流行し、日本国内でも様々な場所でシティポップ音楽を耳にする機会が増えました。
2010年代以降、シティポップを現代風にアレンジした、「ネオシティポップ」というジャンルの音楽も誕生し、国内外でシティポップ再評価の熱が高まっています。
シティポップ全盛期に青春を過ごした世代はともかく、90年代以降に生まれた世代にとっては「シティポップがどんな音楽なのか」と聞かれると答えに詰まる方も多いのではないでしょうか。
今回は「シティポップについてもっと深く知りたい!」という方に向けて、シティポップの歴史と魅力、名曲・アーティストを詳しく解説します。
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シティポップの定義とは?
都会的で洗練された音楽
シティポップ音楽=「夜の首都高をドライブするときに聴きたくなるような、都会で生活する人々に向けた音楽」といったイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
シティポップの定義は非常に曖昧ですが、シティポップ音楽に共通する最大の特徴は、都会的で洗練された音楽ということです。
東京で生まれたシティポップは、当時最先端の技術で制作され、都市で生活する人々に向けた音楽として浸透していきました。
シティポップの特徴
洋楽サウンドを意識した、聴き心地の良いメロディ
シティポップ音楽の特徴は、聴き心地の良いメロディです。
シティポップ全盛期と言われる70年代・80年代のシティポップは当時流行していた洋楽のサウンドを感じさせる音作りがなされています。
海外から最先端のカルチャーを取り入れて日本風にアレンジしたメロディといえるかもしれません。
独特の世界観を持つ歌詞
シティポップの歌詞は、都会の情景や、都会に生きる若者の恋愛と心象風景などを謳った楽曲が多くあります。
シティポップ音楽において、歌詞はサウンドのおまけ程度に考えられることも多いですが、洗練されたサウンドと共に情景が浮かんでくるソングライティングはやはり魅力的です。
シティポップの歴史
はじまりは、「はっぴいえんど」から
「はっぴいえんど」は1970年に、細野晴臣、大滝詠一、鈴木茂、松本隆の4人のメンバーで結成されたバンドです。
1971年に彼らが発表した、洋楽的な洗練されたサウンドと美しい抒情的な日本語の歌詞を両立した1枚目のアルバム「風街ろまん」は、J-POPの先駆けとされています。
彼らが持ち込んだポップスの萌芽は、シティポップ、ひいてはJ-POPの源流として高く評価されています。
はっぴいえんどはアルバムを3枚発表するのみで解散してしまいましたが、解散後も後輩ミュージシャンたちの楽曲制作・演奏・プロデュースに深く関わり、シティポップの名盤と呼ばれる作品のほとんどに彼らが携わっていました。
70〜80年代のシティポップ全盛期
はっぴえんどがシティポップの源流を作り、その後の70年代・80年代にシティポップの全盛期が訪れます。
山下達郎、竹内まりや、荒井由美(松任谷由実)をはじめとするニューミュージシャンが登場し、彼らを中心にシティポップの名盤が次々と産声をあげました。
当時はミュージシャン同士の交流も盛んに行われており、作曲・演奏・編集に至るまで、互いに協力しながら楽曲制作を進めていました。
例えば1973年に結成された、細野晴臣、鈴木茂、林立夫、松任谷正隆(後に佐藤博が参加)からなる音楽ユニット「TIN PAN ALLEY(ティン・パン・アレー)」は、音楽プロデュース・チームとしての側面が強く、バンドとして楽曲・アルバム制作を行う傍ら、荒井由実(松任谷由美)など女性ボーカリストの楽曲制作・演奏者として活躍しました。
はっぴえんどの4人をはじめとして、彼らの後を追う後輩ミュージシャンたちが互いに協力しながら、現在まで語り継がれる名盤を生み出し、シティポップの全盛期を築いていったのです。
海外で再発見されたシティポップ
近年のシティポップムーブメントに火をつけたのは海外からの再評価でした。
2017年以降、YouTubeの音楽選択アルゴリズムに新しいジャンルとして「Youtubecore」が表示されるようになり、日本のシティポップ音楽が海外の音楽ファンの目に留まるようになります。
2011年頃からweb上の音楽コミュニティの間で流行していた「ヴェイパーウェイブ」と呼ばれる、80年代~90年代のムード音楽をサンプリング&加工した音楽にも、日本のシティポップ音楽が多用されるようになり、特に竹内まりやの「プラスチック・ラヴ」が人気を博します。
その後もYouTube、音楽配信サービスを通して、コアなファンだけでなく一般の音楽ファンも、シティポップ音楽に魅了され、韓国をはじめ香港、シンガポール、インドネシアなどで爆発的な人気を得ました。
日本でも逆輸入の形で再評価の熱が高まり、シティポップ音楽を聴いたことがない若年層の間でも試聴されるようになります。
2010年代にネオシティポップが誕生
2010年代以降、シティポップ音楽をリスペクトするミュージシャンたちによって、現代風に再解釈・再構築した「ネオシティポップ」と呼ばれるジャンルの音楽が生み出されました。
ネオシティポップは、都会的で洗練されたメロディ、抒情的で独特の世界観を持つ歌詞など、シティポップの特徴を踏襲した音楽ですが、より現代の情景・人々の心情に寄り添った楽曲が多く、シティポップを意識して制作された現代音楽と定義することができます。
70年代・80年代のシティポップが海外で再評価されているのと同時に、日本では現在もシティポップが受け継がれ、若手ミュージシャンによって新しいシティポップが生み出されています。
シティポップの名曲10選
「PLASTIC LOVE」竹内まりや
都心の女性の心を描いた一曲です。
満たされている気がするけれども、そこには実は寂しさが潜んでいるという心情を謳っています。
曲のメロディは言わずもがな良いです。
現代でも色褪せない名曲といえる一曲です。
「雨のウェンズデイ」大瀧詠一
この曲を聴くと、どこか切なくて懐かしいそんな気持ちになるのではないでしょうか。
爽快感があるというよりは、どこかしっとりとした印象の曲です。
作詞は松本隆が担当していて、この曲の世界観は空気が澄んでいる感じがあります。
必聴です。
「DOWN TOWN」SUGAR BABE
名曲です。シティポップといえばこの曲という気がします。
キーボードとギターの音が重なり合って生まれる心地よいリズムにあなたも夢中になるはずです。
サビの「ダウンタウン繰り出そう」という歌詞もまさにシティポップという感じがします。
「SPARKLE」山下達郎
山下達郎らしさ全開の音作りがなされた一曲。
やはり「夏といえば山下達郎」で決まりだと思わせてくれます。
疾走感と華やかさがあるリズムと伸びやかな歌声は、これ以上言うことなく良いです。
気になるあの子とのドライブの時にかけてみてはいかがでしょうか。
「エイリアンズ」KIRINJI
郊外で生活する私達をエイリアンと呼ぶ、その世界感は耽美でユーモアが効いています。
歌詞は勿論のこと、メロウなリズムが、都会的で洗練されたそれでいてどこか不確かな世界観を余計に引き立たせます。
2000年に発表された楽曲ですが、近年のシティポップの金字塔といっても過言ではない1曲です。
「頬に夜の灯」吉田美奈子
都市で生活する人々の心情表現が上手い吉田美奈子らしい一曲。DJ達の間でも高い評価を得ています。
実はこの曲はNYでダビングをされていて、セッションも豪華です。
「今夜はブギー・バック」小沢健二
小沢健二の狂気的な色気を孕んだ一曲です。
様々なアーティストにカバーもされているので、聴いたことがある人も多いかもしれません。
スチャダラパーとの共演でラップパートもあります。
90年代らしい音作りと青春を謳歌する姿を追体験してみてはいかがでしょうか。
「さざ波」荒井由実
こちらもシティポップの初期の名曲といえるかもしれません。
軽快なリズムと伸びやかな歌声は非常に魅力的です。
現代のユーミンの面影を早くも感じる名曲をぜひ聴いてみてください。
「君は1000%」1986オメガドライブ
夏になったらきっとこの曲を聴きたくなるはずです。
疾走感あるメロディと少し切ない歌詞がたまりません。
日本だけでなく、欧米でも評価が高い一曲です。
それだけメロディが良い曲ということなので、是非。
「都会」大貫妙子
彼女の歌声にはどこかみずみずしさが感じられます。
坂本隆一がアレンジを担当しているこの曲は、ポップだけどもどこか落ち着いた雰囲気があります。
2010年以降のシティポップの再評価に伴って評価された曲ですが、やはり良い曲です。
ポップな雰囲気で溢れた一曲を是非聴いてみてください。
シティポップといえばこのアルバム5選
はっぴいえんど「風街ろまん」
日本のロックの始まりであり、金字塔との呼び声の高いアルバムです。
やはりシティポップを聴きたいなら、こちらは外せません。
心地よいリズムと澄んだ空気を感じさせる詞世界にきっと夢中になるはずです。
特に「風をあつめて」は晴れた日曜日の朝に聴きたくなるようなそんな曲です。
大滝詠一
「A LONG V・A・C・A・T・I・O・N」
「ロンバケ」の愛称で親しまれる、大滝詠一の「A LONG V・A・C・A・T・I・O・N」は、彼が初めて大衆性を追求したといわれるアルバムです。
大衆に媚びるような意味ではなく、重層な音作りと軽快でユーモアを感じる聴き心地が実現されています。
やはり、このアルバムで一番有名な曲は「君は天然色」ですが、はっぴいえんど時代のメンバーも参加している「雨のウェンズデイ」も必聴です。
爽やかで甘酸っぱい青春の思い出と共に聴いてみてください。
山下達郎「FOR YOU」
当時のカーステレオの定番として、先ほど紹介した「ロンバケ」と共に親しまれてきた一枚です。
夏といえば山下達郎と言わしめる、カッティングギターサウンドの爽快感が満載です。
収録曲のバンド演奏も圧巻の一言。
山下達郎は何枚も名盤と呼ばれるアルバムを出していますが、まずはこの一枚からいかがですか。
SUGAR BABE「SONGS」
伝説的とされるバンド、SUGAR BABEからの一枚。
大滝詠一をはじめ、山下達郎、大貫妙子などその後のシーンを支える若きミュージシャンたち参加しています。
どの曲も、今聞いても色褪せない魅力を含んでいて、さすがの一言。
とくに収録曲「DOWN TOWN」はシティポップのクラシックと言っても過言ではありません。
KIRINJI「3」
やはりこちらも外せない名盤、そして名ジャケとも名高いKIRINJIの「3」。
誰もが聞いたことがある名曲「エイリアンズ」が収録されています。
KIRINJIの魅力は何よりもその緻密さと文学的な歌詞作りです。
それらが随所に感じられる「君の胸に抱かれたい」「グッデイ・グッバイ」なども収録されていますので、是非一度聴いてみてください。
シティポップの楽しみ方・レコードのすすめ
アルバム単位で楽しむ
シティポップをより楽しみたい方に、ぜひ聴いてみてほしいのがレコード音源です。
レコードプレーヤーにはスキップ機能や巻き戻し機能はありません。
また、A面とB面があり、続きを聴くためにはわざわざひっくり返さなくてはいけません。
手間がかかりますが、だからこそ小説の起承転結と同じようにアルバム全体を通じて音楽を楽しむことができます。
ミュージシャンが聴いて欲しいと思った順番で、ライブのようにアルバム全体を通して聴いてみると曲単体で聴くよりももう一段深くまで聴くことができるばずです。
再発見とサンプリング
シティポップを聴いていると、「あれ、なんかこれ聴いたことがあるリズムだな」とか「現代のアーティストがカバーしていたな」など、現代の音楽に影響を与えていることが多々あります。
あるいは、レトロで懐かしいリズムが一周回って逆に良い、なんて感じることもあります。
現代の音楽との繋がりや、改めて現代の音楽の中で聴きなおしてみると新鮮に聞こえることも。
そこにシティポップの再発見と音楽のサンプリングという文化の魅力が詰まっているはずです。
今とは違う音質も魅力的
レコードは音をデジタル化していないので、ミュージシャンが録音した音をそのまま聴くことができます。
これは簡単な原理の説明ですが、それだけでも少しテンションが上がりますね。
臨場感と共に、オリジナルを楽しむということもレコードの魅力の一つだと思います。
レコードのジャケットにも注目
界隈では、お洒落だったり、秀逸なレコードのジャケットのことを「名ジャケ」なんて言ったりします。
レコードの場合はCDよりもジャケットが大きく、レトロな雰囲気も相まってインテリアとして飾っている人も多いです。
レコード屋で誰の曲かもしらずにジャケ買いしてみたら、意外と自分好みで新しい好きな曲が増えるなんてことも。
シティポップのジャケットは洗練されたデザインも多いので、是非ジャケットにも注目してみてください。
いかがだったでしょうか?
シティポップへの興味が深まり、あなたがシティポップというカルチャーに親しむきっかけになれたなら幸いです。
いろいろな曲を聴いてみて、是非あなたの「心のベスト10」を見つけてください。
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