ゲルハルト・リヒターとは?ドイツ最高峰の画家の生涯と代表作品について詳しく解説
ドイツが生んだ現代美術の巨匠、ゲルハルト・リヒター。
リヒターは美術界で反絵画的な風潮が強まっていた1960年代後半に作家活動をスタートし、写実画・抽象画・写真の上にペイントしたオーバー・ペインテッド・フォトなど、様々なアプローチで現代絵画の持つ可能性を切り開きました。
今回は、リヒターの生涯と代表作品について詳しくご紹介します。
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ゲルハルト・リヒター とは?
ゲルハルト・リヒター(1932〜)は、ドイツ出身の現代美術の巨匠であり、現在最も有名な画家の一人です。
1960年代から現在に至るまで60年以上にわたり画家として第一線で活躍しており、国際的にも高く評価されています。
リヒターは、写真をもとに写実的に描いた「フォト・ペインティング」や、スキージー(窓の掃除などに使われるゴム製のワイパー)を使った抽象画、ガラスを用いた立体作品、写真の上に絵の具を塗る「オーバー・ペインテッド・フォト」など、幅広い技法を用いて絵画作品を制作してきました。
リヒターは制作活動の傍ら、デュッセルドルフ美術アカデミーで1971年から15年以上にわたって教鞭を取り、若い芸術家たちにも大きな影響を与えてきました。
また、高松宮殿下記念世界文化賞や第47回ビエンナーレ金獅子賞、カイザーリング賞など、国際的な美術賞も数多く受賞しています。
リヒターの作品は美術市場でも高額で取引されており、2021年に香港で開催されたサザビーズ・オークションでは、日本のポーラ美術館がリヒターの「ABSTRAKTES BILD(649-2)」を約29億3,500万円で落札し、大きな話題となりました。
日本国内ではポーラ美術館の他にも、瀬戸内の島々に展開するベネッセアートサイト直島や東京国立近代美術館、国立国際美術館、高知県立美術館などがリヒターの作品をコレクションしています。
ゲルハルト・リヒターの経歴
ドレスデン芸術アカデミーで絵画を学ぶ
リヒターは1932年2月9日、ドイツ東部のドレスデンに生まれました。
まだ幼かったリヒターは第二次世界大戦に徴兵されることはありませんでしたが、父親はドイツ兵となった後、連合軍の捕虜となり1946年まで拘束され、母親の兄弟は戦場で亡くなるなどしています。
特に、精神病を患っていた叔母のマリアンヌがナチスの優生政策によって餓死させられたことは、彼の人生に暗い影を落としました。
終戦後、故郷のドレスデンは東ドイツ領となり、帰還した父親は教職を失うなど困難な生活を強いられました。
リヒターは10年生で職業学校を修了し、1948年、16歳の時に劇場の舞台装置画家の見習いとして働き始めます。
1951年にはドレスデン芸術アカデミーに新設された壁画学科に入学し、画家ハインツ・ローマーに師事しました。
1956年にアカデミーを卒業した後は、夜間の一般向け絵画教室を受け持ちながら、政府からの依頼を受けて壁画を制作する生活を送りました。
当時、東ドイツの共産主義政権は芸術をプロパガンダに利用するために、西側諸国の展覧会を禁止したり抽象表現を規制していたため、リヒターも自由な制作活動を行うことができませんでした。
デュッセルドルフ大学へ入学
1959年、リヒターは西ドイツを訪れ、5年に1度開催される国際美術展「ドクメンタⅡ」で、西側の自由な思想のもとで育った作家たちの作品と出会います。
特に、アメリカの画家 ジャクソン・ポロック(1912-1956)の奔放で鮮やかな抽象絵画はリヒターに大きな衝撃を与え、自身の芸術思想を見つめ直すきっかけとなりました。
1961年、リヒターはベルリンの壁が完成する直前にデュッセルドルフに移住し、デュッセルドルフ美術アカデミーへ入学します。
大学ではアンフォルメルを代表する画家 カール・オットー・ゲッツ(1914-2017)の下で、シグマー・ポルケ(1941-2010)やHAシュルト(1939〜)らと共に学びました。
リヒターは、より前衛的な作品を追求していく中で、1950〜60年代にかけて自身が東ドイツ時代で制作した作品を破棄しています。
この頃から、写真をもとに写実的に描写しながら、全体をぼかして描く「フォト・ペインティング」シリーズを制作し始めました。
デュッセルドルフ芸術大学教授に就任
1971年、リヒターはデュッセルドルフ芸術大学の教授に就任。以後、15年以上にわたり教鞭を取りました。
1960年代半ばからは抽象絵画の制作にも取り組み始め、灰色一色で無を表現した「グレイ・ペインティング」、色見本帖のように色彩を並べた「カラーチャート」などのシリーズを制作します。
1976年には、絵の具を即興的に無意識で重ねながらスクイージーやペーンティングナイフで削りとることで表面を多層化させた「アブストラクト・ペインティング」シリーズの制作を開始し、以後40年以上にわたって描き続けました。
ヴェネツィア・ビエンナーレ、ドクメンタなど国際展に参加
リヒターはドイツを中心に毎年個展を開催し、グループ展にも積極的に参加しました。
世界各国の国際展にも複数回出品しており、イタリアで2年に1度開催される「ヴェネツィア・ビエンナーレ」には1972年と1997年の2回、ドイツで5年に1度開催される「ドクメンタ」にはこれまでに計6回選ばれています。
1997年に開催された「ドクメンタⅩ」では、写真や新聞の掲載写真の切り抜きを組み合わせた作品「Atlas」を展示しました。
第47回ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞を受賞
1997年に開催された第47回ヴェネチア・ビエンナーレでは、「Abstraktes Bild」シリーズを計28点を展示し、最優秀賞の金獅子賞を受賞しました。
同年には高松宮殿下記念世界文化賞も受賞しています。
その他にも、オスカー・ココシュカ賞(1985)やカイザーリング賞(1988年)、ノルトライン=ヴェストファーレン州賞(2000年)など、数々の著名な賞を受賞しています。
ゲルハルト・リヒターの作品の特徴
写真をもとにした絵画表現
リヒターの画家としてのキャリアは、1962年以降に制作を開始した、写真を精密に模写しながらも微妙にぼかして描く「フォト・ペインティング」シリーズから始まります。
新聞や雑誌に掲載された写真や家族写真など、一見何の変哲もない小さな白黒写真から、ドイツ赤軍派、9.11のツインタワー、殺害された人々などの歴史的な事件にまつわるものまで、これまで様々な写真をもとに描かれました。
リヒターはフォト・ペインティングについて
写真から絵を描くと、意識的な思考は取り除かれます。
自分が何をしているのかがわからないのです。
私の作品は、どんな種類の「リアリズム」よりもアンフォルメルにはるかに近い。
と語っています。
リヒターは写真を巧みに模写した上から、ブラシで絵具の表層をぼかしたり、太くラフな筆致で輪郭を不明瞭にすることで、元々の写真が持つイメージや意味を曖昧にしています。
フォト・ペインティングの他にも、プリントした写真の上に絵具を重ねた「オーバー・ペインテッド・フォト」シリーズや、自身の絵画を撮影した写真そのものを作品として提示するなど、絵画と写真の関係性を探るような試みの作品も発表しています。
具象と抽象の共存
リヒターは絵画における「具象」と「抽象」という2つの表現方法を模索し、絵画の新たな可能性を見出してきました。
その集大成ともいえる「ビルケナウ(Birkenau)」は、抽象シリーズの「アブストラクト(Abstracts)」と一見同じような表現に見えますが、ナチス政権によるユダヤ人大量虐殺が行われた「アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所」を撮影した4枚の写真をもとに描いたもので、リヒターがホロコーストを初めて主題として扱った作品として知られています。
リヒターは、ホロコーストの写真イメージをキャンバスに転写した上から絵具の層を重ねて覆い隠し、削りとることで抽象画のような見た目の絵画を制作しました。
さらに、完成した絵画「ビルケナウ」を撮影・複製した写真を作品として提示し、ホロコーストのような恐ろしい非人道的な殺戮が再び起こり得るという含意も示唆しています。
ゲルハルト・リヒターの代表作品10選
Albumfotos(1962)
「Albumfotos」は、1962年〜1966にかけて制作された作品で、「Atlas」シリーズのうちの1つです。
Atlasとは、リヒターが1960年代から集めていた写真や新聞の切り抜きなどを台紙の上に並べて貼り付けた作品シリーズです。
Albumfotosは、家族写真を集め構成されたシリーズとなっています。
1025 Farben (357-3)(1974)
「1025 Farben (357-3)」は、「カラーチャート」シリーズのうちの1つです。
カラーチャートシリーズは、1966年から制作を開始し、2008年の「Quattro Colori (22. Juni 08)」に至るまで断続的に制作されました。
色見本帳をもとに構成され、色の配置とスケール以外には作家の意思が反映されない機械的な抽象絵画です。
Station(1985)
「Station」は、抽象絵画「Abstracts」シリーズのうちの1つです。
グラデーションを背景に灰色のパイプのようなものが描かれており、その上から絵具が重ねられています。
同年に制作されたStationは2つあり、本作はノースカロライナ美術館が所蔵しているもので、もう1点は高知県立美術館にコレクションされています。
Betty(1988)
「Betty」は「フォト・ペインティング」シリーズのうちの1つで、リヒターの愛娘、バベッテを撮影した1977年の写真をもとに描かれた作品です(タイトルのBetty(ベティ)はバベッテの愛称)。
輝くブロンドの髪や洋服の質感が細やかに描写された子どもの姿が描かれていますが、顔は後ろを向いており、彼女がどこを見ているのか、どんな表情をしているのか鑑賞者は知ることができません。
アプストラクテス・ビルトシリーズ(1985-1989)
「アプストラクテス・ビルト」シリーズは、リヒターが1960年代半ばから制作を開始した抽象絵画「Abstracts」シリーズのうちの1つです。
キャンバスの表面をゴム製のヘラが付いたスキージーで削り、スパッタリングやブラシストロークを加えて絵具の層を塗ったり剥がしたりする手法で描かれています。
ゲルハルト・リヒターの代表作品
バラ(1994)
「バラ」は、「フォト・ペインティング」シリーズの1つです。
1992〜1994年に制作された「Atlas」シリーズの一つ「Still Lifes (Flowers)」のうちの1枚の写真をもとに描かれました。
Nov. 1999(1999)
「Nov. 1999」は、プリントした写真の上に絵具を重ねた「オーバー・ペインテッド・フォト」シリーズのうちの1つです。
同じタイトルの「Nov. 1999」は複数枚制作されており、本作は「Nov. 1999(30)」にあたります。
緑の生えた地面が写る写真に、炎のようにも見える赤い絵具が塗り重ねられています。
Firenze(2000)
「Firenze」は、「Nov. 1999」と同じく、プリントした写真の上に絵具を重ねた「オーバー・ペインテッド・フォト」シリーズのうちの1つです。
同タイトルの作品は約120点制作されており、本作は「Firenze(55/99)」にあたります。
背景にプリントされている写真は数種類ありますが、同じ写真を繰り返し使って上に重ねる絵の具のみを変化させていったものもあります。
ケルン大聖堂のステンドグラス(2007)
リヒターが制作したケルン大聖堂(ドイツ)の南翼廊のステンドグラス窓です。
2003年にケルン大聖堂はステンドグラスを一新することになり、複数の芸術家のプランの中からリヒターの案が採用されました。
106㎡の窓に72色のステンドグラス(9.6cm×9.6cmの正方形サイズ)11,263枚がモザイク風に配置されています。
14枚のガラス(2011)
「14枚のガラス」は、瀬戸内海の島、豊島(愛媛県)に設置されているガラスのインスタレーション作品です。
2011年の秋にリヒターは豊島に滞在し、本作を設置することを承諾しました。
作品を収蔵・展示している箱型の建物も、リヒター本人のデザインに基づいて設計されています。
海側に面した窓ガラスから陽が差し込み、時間帯によって作品の見え方も変化します。
全長8メートルあり、リヒターのガラスシリーズの中では最大かつ最後の作品です。
ゲルハルト・リヒターの作品を所蔵する主な美術館(海外)
アルテ・ナショナルギャラリー(ベルリン)
アルテ・ナショナルギャラリーは、1861年に開館したドイツ・ベルリンのムゼウムスインゼル(博物館島)にある国立美術館です。
古典主義、ドイツロマン主義、ビーダーマイヤー、印象派、現代美術などの作品を中心にコレクションしています。
近年、ゲルハルト・リヒター美術財団が100点のリヒターの作品を永久貸与品としてアルテ・ナショナルギャラリーに寄贈しました。
主要作品は2023年4月から2026年までノイエ・ナショナルギャラリーで展示される予定です。
アルテ・ナショナルギャラリーが収蔵するリヒター作品の一部
- Besetzes Haus(1989)
- 6 Stehende Scheiben(2002)
- 「ビルケナウ」シリーズ(2014)
アルテ・ナショナルギャラリー(ベルリン)(Alte Nationalgalerie)
住所:Bodestraße 1-3, 10178 Berlin
営業時間:10:00-18:00(火、水、金、土、日)
10:00-20:00(木)
休日:月曜日
公式サイト:https://www.smb.museum/en/museums-institutions/alte-nationalgalerie/home/
ルートヴィヒ美術館(ケルン)
ルートヴィヒ美術館は、1976年に開館したドイツ・ケルンにある市立美術館です。
20世紀と21世紀の芸術作品を中心にコレクションしています。
パブロ・ピカソの作品を多く所有していることでも有名で、パリとバルセロナに次ぐ世界第3位の収蔵数となっています。
ルートヴィヒ美術館が収蔵するリヒター作品の一部
- Ema(1966)
- 5 Doors(1967)
- Abstract Painting(2016)
ルートヴィヒ美術館
住所:KolnHeinrich-Boll-Platz
営業時間:火~日:10:00~18:00、毎月第一木曜日:10:00~22:00、祝祭日(月曜含む):10:00~18:00
休日:月曜日、1月1日、12月24日、25日、31日
公式サイト:https://www.museum-ludwig.de/
東京国立近代美術館
東京国立近代美術館は、1952年に開館した東京都千代田区にある美術館(本館)です。
19世紀末から現代までの日本と海外の美術作品を13,000点以上コレクションしています。
2022年6月7日〜10月2日には、ゲルハルト・リヒターの作品約110点を展示する大規模な個展が開催されました。
東京国立近代美術館が収蔵するリヒター作品
- 9つのオブジェ(1969)
- 抽象絵画《赤》(1994)
東京国立近代美術館
住所:千代田区北の丸公園1-1
開館時間:10:00〜17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)、展示替期間、年末年始
公式サイト:https://www.momat.go.jp/am/
高知県立美術館
高知県立美術館は、1993年に開館した高知県高知市にある県立美術館です。
国内外の約440名の作家による芸術作品を41,000点以上収蔵しています。
なかでも油彩画5点、版画約1,200点からなるマルク・シャガールのコレクションで知られています。
高知県立美術館が収蔵するリヒター作品
- ステイション(577-1)(1985)
高知県立美術館
住所:高知県高知市高須353-2
開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:年末年始(12月27日~1月1日)
公式サイト:https://moak.jp/
国立国際美術館(大阪)
国立国際美術館は、1977年に開館した大阪市北区中之島にある美術館です。
開館当初は、大阪府吹田市の万博記念公園にある万国博美術館跡を美術館として使っていましたが、2004年に現在の中之島へ移転しました。
1945年以降の国内外の美術作品を約8,200点コレクションしています。
国立国際美術館が収蔵するリヒター作品
- 抽象絵画 (648-1)(1987)
- フィレンツェ(2000)
- STRIP (926-6)(2012)
国立国際美術館
住所:大阪府大阪市北区中之島4-2-55
営業時間:10:00~17:00 (入場は16:30まで)
金曜日・土曜日は20:00まで(入場は19:30まで)
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日に休館)※この他にも臨時に休館することがあります。
公式サイト:http://www.nmao.go.jp/
ポーラ美術館(箱根)
ポーラ美術館は、2002年に開館した神奈川県箱根にある美術館です。
ポーラ創業家2代目にあたる鈴木常司氏のコレクションを基に設立し、印象派などの西洋近代絵画や日本の洋画・日本画、東洋磁器、ガラス工芸品など約10,000点を収蔵しています。
ポーラ美術館が収蔵するリヒター作品
- グレイ・ハウス(1966)
- 抽象絵画(649-2)(1987)
ポーラ美術館(箱根)
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
営業時間:9:00-17:00(入館16:30まで)
休館日:年中無休(ただし展示替のための臨時休館あり)
公式サイト:http://www.polamuseum.or.jp/
ベネッセハウス ミュージアム(直島・香川県)
ベネッセハウス ミュージアム(旧称:直島直島コンテンポラリーアートミュージアム)は、1992年に開館した香川県の直島にある美術館です。
財団法人直島福武美術館財団が運営する「ベネッセアートサイト直島」のなかの主要美術館の1つで、安藤忠雄による設計の美術館とホテルが一体となった「ベネッセハウス」内にあります。
絵画・彫刻・写真・インスタレーションなどの350点以上の現代美術作品が収蔵されており、ホテルの宿泊者のみが鑑賞できる作品もあります。
ベネッセハウス ミュージアムが収蔵するリヒター作品
- ベティ(1991年)
ベネッセハウス ミュージアム
住所:香川県香川郡直島町琴弾地
営業時間:8:00〜21:00(最終入館20:00)
休館日:年中無休
公式サイト:http://benesse-artsite.jp/art/benessehouse-museum.html
豊島(愛媛県)
豊島は愛媛県の瀬戸内海に浮かぶ無人島で、2016年に開館したTHE TOYOSHIMA HOUSEでは、リヒターの「14枚のガラス」が恒久作品として展示されています。
THE TOYOSHIMA HOUSEの設立は、特定非営利活動法人現代アートプラットフォームとNPO法人ピースウィンズ・ジャパンによる共同プロジェクトです。
一般公開されるのは年間で3ヶ月ほどと期間限定になっているので、訪問する前に公式サイトを確認しましょう。
豊島
住所:愛媛県越智郡上島町豊島
営業時間:不定期(*公開期間は事前に必ずお問い合わせください)
休館日:不定期
公式サイト:https://gendaiart.hp.peraichi.com/
「ゲルハルト・リヒター」のおすすめ関連書籍
評伝 ゲルハルト・リヒター
「評伝 ゲルハルト・リヒター」は、ドレスデン美術館内にあるゲルハルト・リヒター・アーカイブのディレクターで、2年間リヒターの秘書も務めたディートマー・エルガーによる著書です。
ドイツで2002年に刊行した「Gerhard Richter. Maler—Biografie und Werk」を基に、近年の活動も書き加えた本人公認の評伝書です。
リヒター本人の言葉や作品写真、150点以上のプライベート写真が掲載された充実の内容となっています。
幼少期から現代までを時系列で紹介しているので、リヒター入門書としてまずおすすめしたい一冊です。
ゲルハルト・リヒター 光と仮像の絵画
「ゲルハルト・リヒター 光と仮像の絵画」は、芸術評論家の市原研太郎による著書です。
前著「ゲルハルト・リヒター ―ペインティング・オブ・シャイン―」に加え、1997年リヒター来日時のインタビューや2001年川村記念美術館の「ATLAS」展の文章などが掲載されています。
理論的にリヒターの芸術論を理解したい方におすすめな一冊です。
「ゲルハルト・リヒター」の映画・映像作品
ある画家の数奇な運命(2020)
「ある画家の数奇な運命」(原題:Werk ohne Autor、直訳:作家のいない作品)は、リヒターの半生をモデルにしたフィクション映画です。
監督は「善き人のためのソナタ」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したドイツ出身のフローリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。
「登場人物の名前は変え、どの部分が真実でどの部分が創作なのかは互いに明かさないこと」を条件として、ドナースマルク監督はリヒターに取材を重ねながら脚本を書き上げました。
しかし、予告編を観たリヒターは、内容が「大仰」で「スリラーとしての脚色が過剰」だとして憤慨します。
完成した映画は、第75回ヴェネツィア国際映画祭や第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされるなど、世間から高評価を獲得しました。
フィクションではありますが、リヒターの半生が知れるおすすめの1本です。
2018年公開 監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
ゲルハルト・リヒター ペインティング(2011)
「ゲルハルト・リヒター ペインティング」は、リヒターの芸術の秘密に迫るドキュメンタリー映画です。
監督は2007年に短編映画「ゲルハルト・リヒターの窓(原題:Das Kölner Domfenster)」でワールド・メディア・ゴールド・アワードを受賞したコリンナ・ベルツ。
リヒターが実際に作品を制作する様子や批評家やギャラリストと会話する様子が映されています。
本人の言葉で制作や芸術に対する思いを聞くことのできる貴重な映像となっています。
批評家から高く評価され、ドイツ映画界の最高賞であるドイツ映画賞(金賞)を受賞しました。
リヒターの制作現場を覗いてみたい方にぜひおすすめしたい1本です。
まとめ
「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれる現代美術の巨匠ゲルハルト・リヒター。
写真をもとに描くフォト・ペインティングや抽象画シリーズのAbstractsなど、具象と抽象を行き来するさまざまな表現方法で、今日の絵画の新たな可能性を提示しました。
リヒターの作品や芸術論をもっと詳しく知りたい方は、ぜひ実際の作品や書籍、映画をチェックしてみてくださいね。
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