アクリル絵の具の使い方 種類と特徴を徹底解説
【初心者向け】アクリル絵の具の
基本的な使い方と描き方
画材屋に置いてある絵の具の中でも、特に豊富な種類と色数を誇っているアクリル絵の具。
多くのクリエイターに愛用されている絵の具ですが、ビギナーさんの中には、
「アクリル絵の具を使ってみたい!でも使い方がよく分からない…」
そんな方も多いのではないでしょうか。
アクリル絵の具って水彩絵の具って何が違うの?
アクリル絵の具と他の画材を併用したい。
メディウムって何?
今回はそんな方の疑問にお答えするべく、アクリル絵の具の基本的な知識と使い方、上級者テクニックまで幅広くご紹介。
皆さんも記事を参考に、色んな表現にチャレンジしてみてくださいね。
「アート診断」
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アクリル絵の具とは?
一般的に「アクリル絵の具」とは、アクリル樹脂を用いた絵の具全般を指す名称として使われています。
天然の樹脂や膠を顔料と混ぜて作られた油絵や日本画の伝統的な絵の具に対して、アクリル絵の具は石油化学の発達によって生産することが可能になった絵の具で、水で溶いて使いますが乾燥後は耐水性になる、というのが最大の特徴です。
近年では油絵のみを用いる画家はむしろ少数と言われており、アクリル絵の具を併用するペインターが増えています。
水彩絵の具との違い
乾くと耐水性になる
耐久性が強い
木材やガラスなど、紙以外の素材にも描ける
厚塗りやメディウムとの併用が可能
不透明色がある
アクリル絵の具は、水彩絵の具と比べてこのような違いがあります。
マットで均一な色面を塗るのに適した「不透明色」があることから、デザインやアニメーションの現場でも用いられることが多い画材です。
アクリル絵の具の特徴
多くのペインターがアクリル絵の具を採用している理由とは一体何なのでしょうか?
ここからは、アクリル絵の具の特徴とその利便性についてご紹介します。
乾燥が早い
アクリル絵の具の一番の特徴は、乾燥の速さです。
キャンバスや板といった紙以外の支持体上でも、水彩絵の具と同じスピードで乾くので非常に汎用性が高く、デザインの現場でも用いられることの多い画材です。
重ね塗りができる
アクリル絵の具は、油絵のように重ね塗りが可能な絵の具です。
油絵で違う色を塗り重ねる場合、下の層が乾燥するまで待つ必要がありますが、アクリル絵の具は乾燥が早いので下の層を気にせずに塗り重ねることができます。
短時間で油絵を仕上げたいときなど、アクリル絵の具を下地として使用することで、重厚な画面を短い時間で作ることも可能です。
水彩のような描き方もできる
アクリル絵の具は、水彩のような透明感のある表現も可能です。
油絵のような厚塗りと、水彩絵の具のようなぼかし・グラデーション表現が同時にできる汎用性の高さが、多くのペインターがアクリル絵の具を愛用する最大の理由となっています。
乾くと耐水性になる
アクリル絵の具は水で溶いて使用しますが、乾くとその層は耐水性になります。
水彩の場合、水に濡れると消えてしまう可能性がありますが、アクリル絵の具は水に強いので、水に濡れても乾燥させれば元の状態に戻ります。
堅牢で衝撃に強い画面になる
アクリル絵の具は、水彩絵の具のような表現も可能ですが、重ね塗りに適した水彩絵の具です。
絵の具の層を重ねれば重ねるほど、堅牢で衝撃に強い画面になります。
アクリル絵の具の種類
アクリル絵の具(アクリルカラー)
アクリルガッシュ
アクリル絵の具と一般的に呼ばれている絵の具には、この2種類があり、それぞれ素材や発色が異なります。
一番明確な違いは、色の透明度です。
アクリル絵の具(アクリルカラー)
→ 透明色・不透明色
アクリルガッシュ
→ 不透明色
下の色が透けやすい「透明色」や「半透明色」の絵の具が「アクリル絵の具(アクリルカラー)」と呼ばれるのに対して、下の色を隠蔽する性質を持ったマットな「不透明色」の絵の具を「アクリルガッシュ」と言います。
ここからは、アクリル絵の具とアクリルガッシュの違いについて、さらに詳しくご紹介します。
「アクリル絵の具」と「アクリルガッシュ」の違い
アクリル絵の具
アクリル絵の具(アクリルカラー)は、水彩絵の具と同じく透明感と光沢があり、下の色を生かした作画ができる絵の具です。
耐久性・耐光性に優れているので木材やコンクリート、ガラスなど、紙以外の素材にも描画できます。
アクリルガッシュと比べると筆跡は残りやすいですが、メディウムを使えばマットな色面を塗ることも可能です。
アクリルガッシュ
アクリルガッシュは、隠蔽力が高く筆跡が残りにくい、ポスター制作など均一な色面を塗るのに適した絵の具です。
アクリル絵の具よりも顔料が多く発色は良いですが、耐久性・耐光性は劣ります。
マットな質感で絵の具の光沢感は少なく、美大の色面構成やデザインの現場でも使われることが多い画材です。
アクリル絵の具はより水彩に近い使い方ができるのに対して、アクリルガッシュは均一な色面を塗るのに特化した、マットな質感の絵の具、と言うことができるでしょう。
アクリル絵の具主なメーカー 有名ブランド
ここからは、代表的なアクリル絵の具のメーカー・ブランドをご紹介します。
どのメーカーが一番良いということはありませんが、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるので、自分に合った絵の具が見つかるまで複数のメーカーを試してみましょう。
同じ色名でもニュアンスが異なるので、1つのメーカーで揃えず色によってメーカーを変えるのもおすすめです。
ターナー「アクリルガッシュ」
ターナーはアクリル絵の具の最王手メーカーと言っても過言ではありません。何と言ってもその魅力は219種類という圧倒的な色数の多さと発色の良さ。
普通色以外にもパステルカラーや日本伝統色のカラーシリーズがあり、多くのクリエイターの創作意欲を掻き立てています。
ホルベイン「アクリリックガッシュ」
油絵の具の最王手として有名なホルベインですが、アクリル絵の具の分野でもシェアを広げています。
色数は106。ターナーに比べて勢いはやや劣りますが、メディウムの種類も豊富で退色も少ない優れた絵の具です。
バニーコルアート「リキテックス」
アクリル絵の具第2大手のリキテックス。ジェッソ・メディウムの種類が豊富で日本最大級のシェアを誇るブランドです。
油彩風のタッチを活かした描き方だけでなく、水やメディウムを混ぜて硬さを変えたり、テクスチュアをつけたり自由に調節できるので、幅広く使用できます。
ターレンス
「アムステルダム アクリリックカラー」
近年着々とシェアを拡大してきているのが、ターレンスから発売されている「アムステルダム アクリリックカラー」。
その特徴は何と言っても絵の具の容量の多さ。大容量のチューブを安く購入できることから、大作を作りたいアーティスト・ペインターが愛用しているアクリル絵の具です。
アクリル絵の具の使い方
ここからは、実際にアクリル絵の具の使い方をご紹介します。
水彩絵の具と基本的には変わらないので、ビギナーさんも気軽に始められるのがアクリル絵の具のメリットです。
必要な画材・用具
①アクリル絵の具
②筆
③パレット
④水入れ
アクリル絵の具を使う際に必要な画材・用具は以上の4つです。
筆
筆は、アクリル・水彩用の柔らかい筆を使用しましょう。
筆の種類を全て揃える必要はありませんが、平筆と細い筆(面相筆など)は持っておくと便利です。
パレット
アクリル絵の具は乾燥が早くすぐに固まってしまうので、紙パレットなど使い捨てのできるパレットがおすすめです。
水入れ
水入れは水彩用と同じもので構いません。要らないタオルや雑巾・ティッシュなど、絵の具のついた筆を拭けるものも用意しておくと描くときに便利です。
下書きをしてから塗る
下書きをしてからアクリル絵の具を塗る場合は、水彩絵の具と同じで鉛筆が水に溶けて混ざってしまう可能性があるので、デッサンのように陰影をつけてがっつり下書きをするのはNGです。
硬めの鉛筆を使って、色を塗るための必要最低限の枠線のみを描くようにしましょう。
水彩絵の具のように使う
アクリル絵の具でも、水彩絵の具のような透明感のある表現が可能です。
前面を透明色で統一しても良いですし、アクリルガッシュと組み合わせて絵の緩急をつけるとなおインパクトのある絵に仕上げることができます。
アクリルガッシュを併用する場合は、透明色から先に塗り、アクリルガッシュで画面全体の印象を締めていくと良いしょう。
色面を塗る
アクリル絵の具は、色面を均一に塗ることに一番適した画材と言っても過言ではありません。
〈色面の塗り方〉
①細い筆を使って、塗りたい部分の枠線を描きます。
②枠線を全て引いてから、中の色面を平筆など太めの筆で塗っていきます。
絵の具を何度も重ねることで色を濃くしていく方法もありますが、紙は水や摩擦に弱いので、実はこの方法はおすすめできません。アクリル絵の具で色面を塗る場合は、なるべく一回の塗りで完成させるイメージで挑むと良いでしょう。
色面の色が均一にフラットに見えるためには、あらかじめ塗りたい色をたくさん作っておくことが重要です。
塗る度に水入れを使って筆に水を含ませるのではなく、あらかじめ作った色と水を混ぜて、塗りやすい状態にしておくことで、綺麗な色面を塗ることができます。
色面を塗るときは筆を動かす方向を常に同じにすると綺麗に塗ることができます。塗る度に筆の方向が縦横バラバラだと、部分的に絵の具の層の厚さが変わってしまうため、色ムラができやすくなります。
アクリル絵の具を使った描き方・テクニック
ここからは、アクリル絵の具を使ったもっと細かいテクニックが知りたい!という人向けに、活用できるアクリル絵の具のテクニックとコツを詳しくご紹介します。
細く長い線を引くには「溝引き」がおすすめ
アクリル絵の具で細くまっすぐな線を描きたい場合は、溝引き定規(直定規)を使うのがおすすめです。
溝引きに必要な用具・画材
①溝引き定規(直定規)
③ガラス棒
②筆
溝引きに必要な道具はこの3点です。
ガラス棒の先の丸い部分を定規の溝に固定しながらスライドすることで、直線を引くことができます。
〈溝引きを使った直線の描き方〉
①お箸を持つように絵の具がついた筆とガラス棒を持ちます。このときガラス棒が手前に来るように持ちます。
②溝引き定規を、直線を引きたい箇所と平行になるように、3〜5cmほど離して置き左手で固定します。
③定規の溝にガラス棒の丸い部分を固定し、線を引きたい位置の上に筆を置きます。
④ガラス棒を左から右にスライドさせ、直線を引きます。
筆を使うと、どうしても線の始めと終わりで線がブレたり幅が太くなったりします。
「溝引きが苦手」「もっと綺麗な直線を引きたい」という場合には、筆の代わりに烏口(カラスぐち)を使った溝引きをおすすめします。
烏口を使った溝引きのやり方
烏口とは、金属製の先がペンのように尖った描画用具です。
先端部分に絵の具をつけ、定規に沿って引くだけなので、簡単に絵の具で直線を引くことができます。
〈烏口を使った溝引きのやり方〉
①水で溶いた絵の具を筆に含ませ、烏口の先端の内側につける。
②直線を引きたい位置に定規を合わせ、左手で固定する。このとき、定規の先端の尖った部分が紙に付かないよう、必ず裏返した状態で用いる。
③烏口の先端を定規に合わせ、左から右スライドして線を引く
烏口を使った溝引きの場合、特に注意したいのが定規の裏表です。
定規の尖った部分が紙に接した状態で溝引きをしてしまうと、絵の具が定規の下に入り混んでしまう場合があります。
また、烏口の先端に溜められる絵の具の量は限られているので、長い線を一度に引くことはできません。綺麗な線を数回に分けて引く必要があります。
グラデーションを作る
アクリル絵の具は、水彩よりも厚い層のグラデーションを作ることができます。
乾燥が早いので、短時間で綺麗に仕上げる必要があります。
グラデーションを作る際には、あらかじめ塗りたい色を多めに作っておきましょう。
筆に含ませる水の量は、少なすぎても筆が途中で止まってしまいますし、多すぎても逆に色が滲んでしまうので、塗る前に雑巾やタオルの上で水分量の調節が必要です。
グラデーションさせたい際に沿って、筆をまっすぐ伸ばすイメージで腕を動かしましょう。
マスキングテープを使って色面を塗る
まっすぐな線を引いたり、四角や三角形といった直線の図形に色面を塗りたいときは、マスキングテープを使ってみましょう。
塗りたい面の縁に沿ってマスキングテープを貼れば、絵の具が枠の外に飛び出すのを防ぐことができ、作業時間を短縮できます。
マスキングテープは細いもので6mm、太いもので50mmなど、幅の種類が意外と豊富にあります。
幅の種類をたくさん持っておくと様々なシーンで臨機応変に活用できるので、たくさん揃えておくのがおすすめです。
メディウムを使ってテクスチャーを出す
アクリル絵の具と混ぜ合わせることで、表現のバリエーションをさらに増大させてくれるのが「メディウム(媒体)」です。
メディウムには様々な種類があり、光沢を増したりザラザラした質感にしたりと効果がそれぞれ異なります。
アクリル絵の具を使って油絵のような重厚感のある作品を描いてみたい、という方は、ぜひ色んな種類のメディウムを試してみてくださいね。
透明色を重ねる
アクリル絵の具は、乾燥を待たずに色の層をたくさん重ねられるメリットがあります。
アクリルガッシュと上手く組み合わせて色のレイヤーを重ねれば、偶然できた色や形を生かして作品を作ることも可能です。
抽象画にチャレンジしたい人や、新しい表現を発見したい人には、色のレイヤーを意識したスケッチやドローイングを試してみることをおすすめします。
ドリッピング
絵に動きをつけたい時や、波、星空などを描くときは、ドリッピングの技法を使って見るのもおすすめです。
黒い髪の上で、白い絵の具をつけた筆を勢いよく筆を振るだけで、満点の星空を再現することが可能です。
〈ドリッピングのやり方〉
①絵の具を多めの水で溶き(絵の具3、水7の割合)、筆に含ませる。
②筆を持ったまま、絵の画面上で腕を大きく振る。
ドリッピングをするときは中〜大サイズの筆を選びましょう。
勢いをつけすぎると、絵の具が画面の外や部屋の壁に飛んでしまう可能性があります。机や床にビニールシートを貼って養生をしたり壁から離れて行うなど、周りを汚さないように心がけましょう。
油絵の具とアクリル絵の具の併用
油絵を早く完成させたい場合は、下地〜途中までをアクリル絵の具で描き、仕上げのみを油絵で行う方法がおすすめです。
一般的には、アクリル絵の具と油絵の具の併用は長期の作品保存に向かないと言われていますが、美大受験など、特に時間短縮が必要とされる現場ではこの方法を採用している学生も多くいます。
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